二幕『朧月夜の揺籃歌』
「っ危ない!!」
地面を蹴りニトを庇うように前に出る。そして鞄からシャベルを手に取り、咄嗟に化け物へ振りかぶろうとした。
……それは一瞬のことだった
同時に乾いた発砲音が後方で響いた。頭上で何かが横切り、それは化け物の喉元めがけて突き刺さった。
振りかぶったシャベルは空を切る。なぜなら、化け物は喉元に突き刺さったもの……鉄の槍が貫いたことによって後方に飛ばされたからだ。
鉄の槍は体を通り抜け、木に突き刺さる。貫かれた化け物は地面に倒れ伏し、泥のように消えていった。
「イルさん!ニトさん!大丈夫ですか!?」
スズメはこちらに駆け寄ると、僕たちの肩をがっしりと掴んだ。
「怪我はありませんか!?」
「僕は大丈夫……」
「すずめ、いたい」
「いやいや……勝手に動いちゃダメでしょ!?」
とスズメはニトの両肩を掴む。動きたそうにしているニトは不機嫌な顔をしている。
ウリはというと突き刺さった槍の方を訝しげな顔で見ていた。
「な、なんなんですかこの槍……」
「……あっちから飛んできたんだろ?」
そう言いつつ左を見たウリは「げ」と言いたげに顔を顰めた。
つられて左を見れば、人影がこちらに近付いてきていた。
「いや〜危ないところだったね君たち」
そうして現れたのはローブを羽織った男性だった。
夜を纏ったように綺麗な長い髪に、不思議な形のした赤い瞳をしている。左目には片眼鏡が付けられていた。
「……メレクさんがやったんですか?」
「そう!もうがっと槍を飛ばしてやったよ!わたしが来ていなかったら今頃腹の中だったね!わたしに感謝するんだよ」
メレクと呼ばれた男は意気揚々と仁王立ちをする。
「……お前にそんな力はない」
「あるよ!ウリくんの中のわたしってそんなに過小評価なの!?」
「そうだが」
「えぇ!?ショックだよ〜!」
メレクは顔を手で覆いメソメソと泣いた。ウリはそれを気にも留めずに僕の方を見る。
「よかったな。探す手間が省けたぞ」
「え?ということは……」
「……この人が昨晩言っていた、魔法の研究をしている人なんです」
「えぇ……?」
「何その反応!?」
嘘泣きに飽きたメレクは「そこはもっと驚いてよ!」と僕を指差す。
スズメはあまり関わりたくないのか、なるべくメレクの方を見ないようにしていた。
「まあいい。わたしのことを知らないのなら仕方ない。自己紹介をしよう」
「……ありがとうございます」
「わたしはメレク。人はわたしを悪魔と呼ぶがね」
「悪魔」
「一変して嫌そうな顔しだしたね、君」
「よくない薬を配って回っていた許せない存在ってザド様が」
「へぇ!?いやいやいや!!」
メレクさんは大袈裟に驚き違うと身振り手振りする。
「まあそんなこと過去にもあったけど、4ノ国で薬配ってたのはわたしじゃないよ!?」
「じゃあ誰が?」
「それはまあ言えないかな〜……ところで、わたしを探してたんでしょ?何用で?」
「色々聞きたいことはあるんだが……まずはこれをどうにかできないか?」
ウリはニトに視線を向ける。
「あぁ……この子供がどうしたの?」
「こいつ……ニトは転換魔法にかかっているんだが、まあ確認したらわかる」
「ふーん」とメレクはニトの前に屈み、両手で頭を掴み撫で回す。
「君、ニトくんっていうんだね?……うわすっごい。転換魔法分離しちゃってるじゃん、これウリがやったの?」
「んなわけないだろ」
「……」
ずっと黙っているニトはというと、怪訝な顔でメレクを睨みながらされるがままにもみくちゃにされていた。
「ん〜……両方ともは流石に難しいけど、ちょっと時間くれるなら片方だけ解除してやらないこともないよ」
「本当ですか?」
「うん。ただし条件付きだがね」
メレクはニトから離れると「こんなところで立ち話もなんだ、わたしの家で話をしようではないか」と進行方向を指差す。
「……わかりました」
スズメたちはメレクについていく。ふとニトの方を見れば、道端にしゃがみ込んでいた。
「……ニト、どうしたの?」
「んー……?ないなーって……」
指さされた方を見れば、先ほどまで木に突き刺さっていた鉄の槍が消えていた。突き刺さった痕跡はあれど、鉄の槍自体は地面にすら落ちていない。
「あれ、本当だ……」
「……」
ニトは怪訝そうな顔で地面を凝視していた。何か考えていることがあるのだろうかと声をかけようとした時「君たち足が遅いぞ」というメレクの声が遠くから聞こえる。見れば三人は既に先へと歩いていた。
置いていかれないようにしなければ迷ってしまう。少し焦りながらもニトの手を掴み駆け足で三人の元へかけよる。
地面を蹴りニトを庇うように前に出る。そして鞄からシャベルを手に取り、咄嗟に化け物へ振りかぶろうとした。
……それは一瞬のことだった
同時に乾いた発砲音が後方で響いた。頭上で何かが横切り、それは化け物の喉元めがけて突き刺さった。
振りかぶったシャベルは空を切る。なぜなら、化け物は喉元に突き刺さったもの……鉄の槍が貫いたことによって後方に飛ばされたからだ。
鉄の槍は体を通り抜け、木に突き刺さる。貫かれた化け物は地面に倒れ伏し、泥のように消えていった。
「イルさん!ニトさん!大丈夫ですか!?」
スズメはこちらに駆け寄ると、僕たちの肩をがっしりと掴んだ。
「怪我はありませんか!?」
「僕は大丈夫……」
「すずめ、いたい」
「いやいや……勝手に動いちゃダメでしょ!?」
とスズメはニトの両肩を掴む。動きたそうにしているニトは不機嫌な顔をしている。
ウリはというと突き刺さった槍の方を訝しげな顔で見ていた。
「な、なんなんですかこの槍……」
「……あっちから飛んできたんだろ?」
そう言いつつ左を見たウリは「げ」と言いたげに顔を顰めた。
つられて左を見れば、人影がこちらに近付いてきていた。
「いや〜危ないところだったね君たち」
そうして現れたのはローブを羽織った男性だった。
夜を纏ったように綺麗な長い髪に、不思議な形のした赤い瞳をしている。左目には片眼鏡が付けられていた。
「……メレクさんがやったんですか?」
「そう!もうがっと槍を飛ばしてやったよ!わたしが来ていなかったら今頃腹の中だったね!わたしに感謝するんだよ」
メレクと呼ばれた男は意気揚々と仁王立ちをする。
「……お前にそんな力はない」
「あるよ!ウリくんの中のわたしってそんなに過小評価なの!?」
「そうだが」
「えぇ!?ショックだよ〜!」
メレクは顔を手で覆いメソメソと泣いた。ウリはそれを気にも留めずに僕の方を見る。
「よかったな。探す手間が省けたぞ」
「え?ということは……」
「……この人が昨晩言っていた、魔法の研究をしている人なんです」
「えぇ……?」
「何その反応!?」
嘘泣きに飽きたメレクは「そこはもっと驚いてよ!」と僕を指差す。
スズメはあまり関わりたくないのか、なるべくメレクの方を見ないようにしていた。
「まあいい。わたしのことを知らないのなら仕方ない。自己紹介をしよう」
「……ありがとうございます」
「わたしはメレク。人はわたしを悪魔と呼ぶがね」
「悪魔」
「一変して嫌そうな顔しだしたね、君」
「よくない薬を配って回っていた許せない存在ってザド様が」
「へぇ!?いやいやいや!!」
メレクさんは大袈裟に驚き違うと身振り手振りする。
「まあそんなこと過去にもあったけど、4ノ国で薬配ってたのはわたしじゃないよ!?」
「じゃあ誰が?」
「それはまあ言えないかな〜……ところで、わたしを探してたんでしょ?何用で?」
「色々聞きたいことはあるんだが……まずはこれをどうにかできないか?」
ウリはニトに視線を向ける。
「あぁ……この子供がどうしたの?」
「こいつ……ニトは転換魔法にかかっているんだが、まあ確認したらわかる」
「ふーん」とメレクはニトの前に屈み、両手で頭を掴み撫で回す。
「君、ニトくんっていうんだね?……うわすっごい。転換魔法分離しちゃってるじゃん、これウリがやったの?」
「んなわけないだろ」
「……」
ずっと黙っているニトはというと、怪訝な顔でメレクを睨みながらされるがままにもみくちゃにされていた。
「ん〜……両方ともは流石に難しいけど、ちょっと時間くれるなら片方だけ解除してやらないこともないよ」
「本当ですか?」
「うん。ただし条件付きだがね」
メレクはニトから離れると「こんなところで立ち話もなんだ、わたしの家で話をしようではないか」と進行方向を指差す。
「……わかりました」
スズメたちはメレクについていく。ふとニトの方を見れば、道端にしゃがみ込んでいた。
「……ニト、どうしたの?」
「んー……?ないなーって……」
指さされた方を見れば、先ほどまで木に突き刺さっていた鉄の槍が消えていた。突き刺さった痕跡はあれど、鉄の槍自体は地面にすら落ちていない。
「あれ、本当だ……」
「……」
ニトは怪訝そうな顔で地面を凝視していた。何か考えていることがあるのだろうかと声をかけようとした時「君たち足が遅いぞ」というメレクの声が遠くから聞こえる。見れば三人は既に先へと歩いていた。
置いていかれないようにしなければ迷ってしまう。少し焦りながらもニトの手を掴み駆け足で三人の元へかけよる。