序章〜子供時代編
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「こんにちは!このラムの実をひとかごください!」
「あらかくかくちゃんいらっしゃい!今日もいいの入ってるよ。ラムと一緒にヒメリもどう?」
「う〜ん…ヒメリは家の庭にたくさんあるの。えっと、じゃあ代わりにオレンを1セット買うから、ラムの実ちょっと安くしておばちゃん」
「かくかくちゃんたら値切り上手なんだから!」
店のおばちゃんが気持ち良く声を上げて笑う。
見た目が子供なのに言動が主婦みたいだもんね。私。
「いつもご贔屓ありがとね!このオボンおまけしてあげるからルーちゃんと一緒にお食べ」
「いいの!?ありがとうおばちゃん!」
すっかり顔見知りになっているきのみショップのおばさんからオボンの実を2個貰った。
オボンって何とも表現しがたい複雑な味なんだけど、甘くてまろやかで美味しいんだよね〜。
家に帰ったら冷やして食べようっと。
▼ かくかく は オボンのみ を てにいれた !
▼かいものぶくろ に しまった !
現在の我が家の食卓は、母と私の持ち回りで支度をしている。
私もすっかり一人前に動ける年齢になったし、元々美味しいものも料理をするのも好きなのだ。
正直あまり料理上手とは言えない母に代わって、全ての料理を任される日もそう遠くない気もする。
『うちの娘、私と違って料理上手なのよ。ポッポがオニスズメを産むってこの事かしらねえ…。ふふ、羨ましいでしょ?前に焼いてくれたオムレツも本当にフワフワでね…』
なんて、電話口で嬉しそうに話していた母のために今日はオムレツにする予定だ。
料理のコツは元の世界の母親から。ポケモン世界の母とは違い非常に料理上手な人だった。
(……お母さんの手料理が恋しい)
厚揚げの煮物…甘酢ダレで和えた鶏の唐揚げ…。自家製ぬか床の漬物…。
とろとろに煮込んだ豚の角煮…手作りコロッケ…。
やばい。これ以上思い出したら泣きそうになる。
この話もうやめよ。
「買い忘れはもうないかな…」
多くの買い物客が集まるナギサ市場。
朝市のような直売所のような。いろんなお店が並んでいて、いつ来ても飽きなくて楽しい。
安いよ安いよ!なんて掛け声は、下町の商店街みたいで懐かしい感じがする。
野菜、果物、きのみ、香辛料に、それから苦〜い漢方薬。お花にチーズ、産みたて卵に…シール。
食品ばかりの市場で何故シールが売ってるんだ。謎。
シールというのは、ボールシールと言ってモンスターボールをデコレーションするためのシール。
ちょっと前にテレビコトブキで取り上げられた事もあって、若いトレーナー中心にブームに火がついているんだとか。
最近は仲の良い友達同士や、恋人同士でお揃いのシールをボールに貼ってマルチバトルするのが流行っているらしい。
今日もシール目当てと思しき旅のトレーナーと市場で何人もすれ違った。
ナギサ市場のシール屋は日替わりでいろんな可愛いシールを置いているから、市場に行くときは私もたまに立ち寄って眺める。
ちなみに私が気になっているのはバブルシール。ボールに貼って投げると、ポコポコとシャボン玉が出るシールだ。
在庫があったら買ってもいいかな。くらいで、そこまで熱心に欲しい訳じゃないけど。
「いらっしゃ〜イ」
「…うわ、『売り切れ』ばっかり」
「生産追いついてなくてネ〜。人気だから購入はしばらくお一人様1枚限りとさせて頂いてるヨ」
特売の卵かよ。たかがシールなのに。
なるほどたくさん欲しい場合は毎日通わないといけないのか。すごいな。
「でもウチで扱ってるのは本物ヨ。偽物じゃないヨ。良心的な価格で正規品ネ!」
喋り方めっちゃ怪しいなこのお兄さん。
さすがヒット商品。すでに紛い物が世間に出回っているようだ。どんだけ人気なんだ。
「バブルシールの在庫ありますか?」
「ん〜〜、バブルシールは〜…あ、あったヨ。今日最後の1枚だネ!」
「え、ラストワン!?」
「お客さんラッキーガール!それが売れたら今日はもう店仕舞イ。買うしかないよネ!」
両手の人差し指を私に向けて、げっつ!みたいなポーズで勧めてくるお兄さん。
見に来ただけで買うとは言ってないんだけど…。でも最後の一枚か〜。
次いつ入荷するかわかんないもんなあ。
「お買い上げありがとうございましタ〜!!また来てネ!」
「…買ってしまった」
残り1個!とか数量限定!とか、そういう言葉に昔から弱い。
冬限定のチョコとか私、絶対買っちゃうタイプ。
でもいいか!可愛いし!ルーちゃんに似合いそう!
ほくほくした顔で市場を歩いていると、前から婦人警官さんが歩いてきた。
キビキビしていて格好いい。目が合うと、ニコッと笑って敬礼をしてくれた。
「かくかくちゃんこんにちは。今日もお使いご苦労さまです」
「こんにちは!ジュンサーさんもお務めご苦労さまです」
子供らしからぬ挨拶でペコリと頭を下げれば、ジュンサーさんは目を細めてクスクスと笑った。
ナギサ市場をよく巡回しているジュンサーさんとはすっかり顔馴染みだ。
はじめて一人でお使いに行った時、大きな荷物を持ってウロウロしていたら迷子だと思われて声をかけられたのがきっかけ。
優しくて頼れる素敵な女性なのだ。
「かくかくちゃん、今日も一人でお使い?」
「はい!市場楽しいから、『私が行く!』っていつも立候補するんです。今日は私がオムレツ作るんですよ」
「お手伝い偉いわね。…でも帰りは気をつけてね。最近不審者の情報が寄せられているの。えっと…分かるかしら。不審者って言うのは、怪しい人って事よ」
子供の私でもわかるように言い直してくれるジュンサーさん。笑顔がキュートな上に優しい。私が男だったら確実に惚れてる。
それにしても怪しい人か…。
さっきのシール屋のお兄さんくらいしか怪しい人わかんないなあ。
不審者なんてナギサも物騒になったもんだ。といってもナギサシティがこの世界でどれくらい治安がいい街なのか基準がわからないけど。
10代でポケモンと旅に出るのが一般的だから、元の世界よりも数倍治安が良いもんだと勝手に思っていたけれど、よく考えたらゲームにも悪役は決まって存在していたし…。
今の所そういった組織団体とはお目見えしていないが。
「怪しい人がいたら、すぐ逃げること。あとは大きい声を出して人を呼ぶ。パートナーポケモンがいるからって油断しないこと」
「はい。気をつけます!」
敬礼のポーズをして答えると、「大変結構。では本官は見回りに戻ります。気をつけて帰ってね」と敬礼をしてジュンサーさんは去っていった。
そしてその日の夜。
『…次のニュースです。ナギサシティに不審者の情報が相次いでいます。身長170㎝ほど、50代と見られる男が「おじさんのきんのたまをあげるよ」などという言葉と共に複数のトレーナーに金色のボール状のものを手渡しで…』
私は食べていたオムレツを盛大に吹き出しそうになった。
「あらかくかくちゃんいらっしゃい!今日もいいの入ってるよ。ラムと一緒にヒメリもどう?」
「う〜ん…ヒメリは家の庭にたくさんあるの。えっと、じゃあ代わりにオレンを1セット買うから、ラムの実ちょっと安くしておばちゃん」
「かくかくちゃんたら値切り上手なんだから!」
店のおばちゃんが気持ち良く声を上げて笑う。
見た目が子供なのに言動が主婦みたいだもんね。私。
「いつもご贔屓ありがとね!このオボンおまけしてあげるからルーちゃんと一緒にお食べ」
「いいの!?ありがとうおばちゃん!」
すっかり顔見知りになっているきのみショップのおばさんからオボンの実を2個貰った。
オボンって何とも表現しがたい複雑な味なんだけど、甘くてまろやかで美味しいんだよね〜。
家に帰ったら冷やして食べようっと。
▼ かくかく は オボンのみ を てにいれた !
▼かいものぶくろ に しまった !
現在の我が家の食卓は、母と私の持ち回りで支度をしている。
私もすっかり一人前に動ける年齢になったし、元々美味しいものも料理をするのも好きなのだ。
正直あまり料理上手とは言えない母に代わって、全ての料理を任される日もそう遠くない気もする。
『うちの娘、私と違って料理上手なのよ。ポッポがオニスズメを産むってこの事かしらねえ…。ふふ、羨ましいでしょ?前に焼いてくれたオムレツも本当にフワフワでね…』
なんて、電話口で嬉しそうに話していた母のために今日はオムレツにする予定だ。
料理のコツは元の世界の母親から。ポケモン世界の母とは違い非常に料理上手な人だった。
(……お母さんの手料理が恋しい)
厚揚げの煮物…甘酢ダレで和えた鶏の唐揚げ…。自家製ぬか床の漬物…。
とろとろに煮込んだ豚の角煮…手作りコロッケ…。
やばい。これ以上思い出したら泣きそうになる。
この話もうやめよ。
「買い忘れはもうないかな…」
多くの買い物客が集まるナギサ市場。
朝市のような直売所のような。いろんなお店が並んでいて、いつ来ても飽きなくて楽しい。
安いよ安いよ!なんて掛け声は、下町の商店街みたいで懐かしい感じがする。
野菜、果物、きのみ、香辛料に、それから苦〜い漢方薬。お花にチーズ、産みたて卵に…シール。
食品ばかりの市場で何故シールが売ってるんだ。謎。
シールというのは、ボールシールと言ってモンスターボールをデコレーションするためのシール。
ちょっと前にテレビコトブキで取り上げられた事もあって、若いトレーナー中心にブームに火がついているんだとか。
最近は仲の良い友達同士や、恋人同士でお揃いのシールをボールに貼ってマルチバトルするのが流行っているらしい。
今日もシール目当てと思しき旅のトレーナーと市場で何人もすれ違った。
ナギサ市場のシール屋は日替わりでいろんな可愛いシールを置いているから、市場に行くときは私もたまに立ち寄って眺める。
ちなみに私が気になっているのはバブルシール。ボールに貼って投げると、ポコポコとシャボン玉が出るシールだ。
在庫があったら買ってもいいかな。くらいで、そこまで熱心に欲しい訳じゃないけど。
「いらっしゃ〜イ」
「…うわ、『売り切れ』ばっかり」
「生産追いついてなくてネ〜。人気だから購入はしばらくお一人様1枚限りとさせて頂いてるヨ」
特売の卵かよ。たかがシールなのに。
なるほどたくさん欲しい場合は毎日通わないといけないのか。すごいな。
「でもウチで扱ってるのは本物ヨ。偽物じゃないヨ。良心的な価格で正規品ネ!」
喋り方めっちゃ怪しいなこのお兄さん。
さすがヒット商品。すでに紛い物が世間に出回っているようだ。どんだけ人気なんだ。
「バブルシールの在庫ありますか?」
「ん〜〜、バブルシールは〜…あ、あったヨ。今日最後の1枚だネ!」
「え、ラストワン!?」
「お客さんラッキーガール!それが売れたら今日はもう店仕舞イ。買うしかないよネ!」
両手の人差し指を私に向けて、げっつ!みたいなポーズで勧めてくるお兄さん。
見に来ただけで買うとは言ってないんだけど…。でも最後の一枚か〜。
次いつ入荷するかわかんないもんなあ。
「お買い上げありがとうございましタ〜!!また来てネ!」
「…買ってしまった」
残り1個!とか数量限定!とか、そういう言葉に昔から弱い。
冬限定のチョコとか私、絶対買っちゃうタイプ。
でもいいか!可愛いし!ルーちゃんに似合いそう!
ほくほくした顔で市場を歩いていると、前から婦人警官さんが歩いてきた。
キビキビしていて格好いい。目が合うと、ニコッと笑って敬礼をしてくれた。
「かくかくちゃんこんにちは。今日もお使いご苦労さまです」
「こんにちは!ジュンサーさんもお務めご苦労さまです」
子供らしからぬ挨拶でペコリと頭を下げれば、ジュンサーさんは目を細めてクスクスと笑った。
ナギサ市場をよく巡回しているジュンサーさんとはすっかり顔馴染みだ。
はじめて一人でお使いに行った時、大きな荷物を持ってウロウロしていたら迷子だと思われて声をかけられたのがきっかけ。
優しくて頼れる素敵な女性なのだ。
「かくかくちゃん、今日も一人でお使い?」
「はい!市場楽しいから、『私が行く!』っていつも立候補するんです。今日は私がオムレツ作るんですよ」
「お手伝い偉いわね。…でも帰りは気をつけてね。最近不審者の情報が寄せられているの。えっと…分かるかしら。不審者って言うのは、怪しい人って事よ」
子供の私でもわかるように言い直してくれるジュンサーさん。笑顔がキュートな上に優しい。私が男だったら確実に惚れてる。
それにしても怪しい人か…。
さっきのシール屋のお兄さんくらいしか怪しい人わかんないなあ。
不審者なんてナギサも物騒になったもんだ。といってもナギサシティがこの世界でどれくらい治安がいい街なのか基準がわからないけど。
10代でポケモンと旅に出るのが一般的だから、元の世界よりも数倍治安が良いもんだと勝手に思っていたけれど、よく考えたらゲームにも悪役は決まって存在していたし…。
今の所そういった組織団体とはお目見えしていないが。
「怪しい人がいたら、すぐ逃げること。あとは大きい声を出して人を呼ぶ。パートナーポケモンがいるからって油断しないこと」
「はい。気をつけます!」
敬礼のポーズをして答えると、「大変結構。では本官は見回りに戻ります。気をつけて帰ってね」と敬礼をしてジュンサーさんは去っていった。
そしてその日の夜。
『…次のニュースです。ナギサシティに不審者の情報が相次いでいます。身長170㎝ほど、50代と見られる男が「おじさんのきんのたまをあげるよ」などという言葉と共に複数のトレーナーに金色のボール状のものを手渡しで…』
私は食べていたオムレツを盛大に吹き出しそうになった。
それはおじさんのきんのたま!
ゆうこうにかつようしてくれ!
ゆうこうにかつようしてくれ!