うさぎのかくれんぼ
不意をつかれた、と言えば言い訳にしか聞こえないだろう。伊黒さんからの斬撃をかわし背後に回るも、無論、蛇柱が僕の攻撃を素直に受けるわけがない。空を斬った木刀を立て直す、ほんの一瞬の隙を不死川さんは見逃さない。風柱の木刀が上空から振り下ろされた。受身を取る僕の視界の隅には、蛇柱からの次の攻撃が目前に迫っていた───。
赤く腫れ上がった腕を見て、胡蝶さんは困ったような笑みを見せた。
「不死川さんも伊黒さんも…容赦がないですね」
「手を抜かれては、稽古にならないので」
そう返す僕を否定しないのは、胡蝶さんも鬼の滅亡を一番に願っているからだった。痛み止めの薬を数日分処方してもらい、湿布だと稽古の邪魔になるから塗り薬にしてもらった。
鬼たちの出没が格段に減った今。これを好機ととらえた鬼殺隊では、数日前から柱稽古が行われている。宇髄さんの稽古を終えた隊士たちが、ぽつりぽつりと僕の屋敷へ流れてきていた。日中に過酷な稽古と指導を受けた隊士たちは、食事と入浴を終えればすぐに床に就く。自分にとっての本当の稽古は、日が沈んだ夜が本番だった。
不死川さんと伊黒さん。二人との手合わせを終え、念の為にと蝶屋敷を勧めてきたのは銀子だった。柱稽古に参加をしてはいないものの、夜遅く訪ねてきたにも関わらず、胡蝶さんは快く診察してくれた。
「無理をしないで…とは、私も人のことは言えませんが。本当に辛いときはしっかり休まないといけませんよ。柱稽古はまだ始まったばかりなんですから」
「…はい。ありがとうございます」
素直にお礼を述べると、胡蝶さんが椅子から立ち上がる。先ほどから感じていた気配に、胡蝶さんも気づいていたようだった。
「襧豆子さん、診察は終わりました。入ってきて大丈夫ですよ」
胡蝶さんが診察室の扉を開ける。
バレていると予想してなかった襧豆子が、不意をつかれた表情で立っていた。まだ牙の見えるその口は、もう竹筒を咥えていない。
赤く腫れ上がった腕を見て、胡蝶さんは困ったような笑みを見せた。
「不死川さんも伊黒さんも…容赦がないですね」
「手を抜かれては、稽古にならないので」
そう返す僕を否定しないのは、胡蝶さんも鬼の滅亡を一番に願っているからだった。痛み止めの薬を数日分処方してもらい、湿布だと稽古の邪魔になるから塗り薬にしてもらった。
鬼たちの出没が格段に減った今。これを好機ととらえた鬼殺隊では、数日前から柱稽古が行われている。宇髄さんの稽古を終えた隊士たちが、ぽつりぽつりと僕の屋敷へ流れてきていた。日中に過酷な稽古と指導を受けた隊士たちは、食事と入浴を終えればすぐに床に就く。自分にとっての本当の稽古は、日が沈んだ夜が本番だった。
不死川さんと伊黒さん。二人との手合わせを終え、念の為にと蝶屋敷を勧めてきたのは銀子だった。柱稽古に参加をしてはいないものの、夜遅く訪ねてきたにも関わらず、胡蝶さんは快く診察してくれた。
「無理をしないで…とは、私も人のことは言えませんが。本当に辛いときはしっかり休まないといけませんよ。柱稽古はまだ始まったばかりなんですから」
「…はい。ありがとうございます」
素直にお礼を述べると、胡蝶さんが椅子から立ち上がる。先ほどから感じていた気配に、胡蝶さんも気づいていたようだった。
「襧豆子さん、診察は終わりました。入ってきて大丈夫ですよ」
胡蝶さんが診察室の扉を開ける。
バレていると予想してなかった襧豆子が、不意をつかれた表情で立っていた。まだ牙の見えるその口は、もう竹筒を咥えていない。
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