中等部女子の長い昼休み

「なによ!アタシだってねぇ、と、と…と、友達の悩み相談ぐらい聞けるんだから!聞けるんだからね!」

「ふふっ、ありがとう梅ちゃん」
「成長したねぇ…」
「うるさい!」

梅ちゃんの紅潮した頬と"友達"という単語のおかげで、和やかな雰囲気が三人を包んだ。的確なアドバイスを受け、襧豆子ちゃんも雑誌を受けとりモデル達を流し見ていく。その隣で雑誌を覗くと、髪型特集のページになっていた。

「髪型かぁ…梅ちゃんの言うように帽子を被るなら…三つ編みとか。被らないなら…あ、お団子も好き」

「お団子の髪ならさ、タートルネックが合いそうじゃない?ほら、ちょうどここにあるようなやつ」

「あ、いいね可愛い」

「お団子はだめよ。タートルネックも」
断ち切るようにぴしゃりと梅ちゃんが言い放った。

なんで?疑問符が頭に浮かび、答えを求めるように彼女へ視線を送る。

「タートルネックは脱ぐとき髪型が崩れやすいでしょ。お団子も一緒。横になってぐしゃぐしゃになったとき、直すの大変じゃない」

さも当然とばかりに言われた内容を理解するのに、数分程かかった。なるほどそういう意味か。隣にいる襧豆子ちゃんを見ると、以前ポカンとした表情のままだ。意味が通じていないことを察し、梅ちゃんが続ける。

「襧豆子、服も大事だけど下着もちゃんとしたの用意しとくのよ。間違っても上下別々の下着なんて、女子としてありえないからね」


「………!」
ガタッと勢いよく襧豆子ちゃんが立ち上がると、角椅子が後ろに倒れた。先ほどの梅ちゃんに負けないぐらいの声量で叫ぶ。

「脱がないから!!!!!」

「なんでよ!そういう展開も考えて準備しとかなきゃ。昆布にイブにコクられたら、付き合うでしょ?」

「昆布って言わないで!告白なんて、そんなわけ…」

「ありえない話じゃないでしょ。ねぇ真菰?」
梅ちゃんから同意を求められる。襧豆子ちゃん側につくならば、ここは否定するところではあるが…梅ちゃんの言うことだって一理ある。無一郎くんが二人きりで会おうと誘ってきたのだ。しかもイブ。もしかしたら、告白をする覚悟をもって襧豆子ちゃんを誘ったのかもしれない。

そうなると襧豆子ちゃんも同じ気持ちなわけだから、そういう展開が絶対ないとは言えない。

「う、うん…まぁね…」

「ほら。コクられる、付き合う。そこから後のこと考えたら用意しといた方がいいわよ」

「………想像できない。でも、脱ぐ展開は絶対ない!」

「あら。でも昆布に見せてって言われたら見せるでしょ?」

「!?!?!?」
襧豆子ちゃんの頬が、また林檎のように赤くなってきた。彼から言われるのを想像したのだろう。
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