中等部女子の長い昼休み

「確かに無一郎くん達は昆布にもワカメにも見えるけど…でもそんな言い方しないで!」

「まぁずっと見てたらお味噌汁は飲みたくなるかな〜今の寒い時期なんか特に」

「…アンタ達それでフォローしてんの?」
訝し気に言い返す梅ちゃんは、無一郎くんのことを快く思っていない。息を吸うように悪態つく彼女だけど、無一郎くんに関しては別に理由がある。

思い出し笑いをすると、二人の視線が注がれた。

「梅ちゃん、前に無一郎くんに『どブス』って言われたもんね。でもあれは梅ちゃんが悪いから」

「あぁ〜〜もう!あの時は悪かったって謝ったじゃないの!!」

梅ちゃんが立ち上がって抗議の叫びを上げた。襧豆子ちゃんに向かって『なんでアンタがモテるのかわからない』『アタシの方が可愛い』と、何かとちょっかいをかけていたあの頃。炭治郎も梅ちゃんの兄もその日はいなくて、たまたま場面に出くわした無一郎くんが、襧豆子ちゃんを庇った日があった。

『襧豆子のが可愛いに決まってるじゃん。僻みもいい加減にしなよ、どブス』

さらりと言ってのけた後、襧豆子ちゃんをお姫様抱っこして颯爽と走り去って行く。激怒して泣き叫ぶ梅ちゃんを置いて、残された私と有一郎くんが慌てて追いかけたんだった。

無一郎くんへの恋心を、襧豆子ちゃんから打ち明けられる前のことだ。もしかしたらあの頃から、彼に惹かれていたんじゃないだろうか。梅ちゃんの悪態が、まさか二人を進展させる出来事になるとは想像がつかなかった。
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