同級生二人の短いクリスマス

「かぶせてあげる。ちょっとこっち向いて」
そう言って帽子を受けとると、襧豆子の頭へそっとかぶせた。これを買った店の店員も同じものをかぶっていたから、同じようにすれば大丈夫なはず。彼女の髪にふれ、参考姿を必死で思い浮かべていた。

これでもかと赤く色づいた、彼女の頬にも気づかずに。


「えーっと…多分こんな感じかな?耳って出してた?」

「………う、うん…」
指先が襧豆子の耳たぶにふれる。結われた三つ編みが崩れぬよう注意を払っていると、無意識に顔を近づけていたらしい。襧豆子の瞳がすぐ目の前にあって、その白い頬にふれた。ほんの少し震えた声で襧豆子がつぶやく。

「私………」
「…うん?」

「………今日、この髪にしてよかった」

「…?うん、似合ってるよ。すっごく可愛い。服も髪も…襧豆子も、全部」

やっと言えた。可愛いって。


──はやく言いたい。好きだって。

彼女と過ごす時間はあまりにも短くて、迫る別れの時間に急き立てられる。

「襧豆子」
流れていたクリスマスのメロディが遠のいていった。
降り落ちる雪と宝石の粒が合わさって、光と影を作る。ぼんやりと浮かぶ彼女の瞳が揺れていた。


「 」

明日は悪友たちにお礼を言わなきゃいけない。
今はそんなことは頭の片隅に置いといて。

ゆっくりと頷くのは、昨日までの同級生。
吸い込まれるように、彼女の唇にキスをした。
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