同級生二人の短いクリスマス

「双子だからね。今日みたいなのはしょっちゅうだよ。兄さんもよく僕と間違えられてるし。学園の人ならともかく、知らない人が相手だと、めんどくさいから訂正してないんだ。どうせ一回きり会っただけの人だし、いつも適当に話合わせてる」

「…そうなんだ。二人とも、それぞれにファンの人いっぱいいるもんね」

普段から二人がそうしているのなら、あんな行動せずともよかったんじゃないだろうか。もしかしたら、余計なお世話だったかもしれない。罪悪感が再び沸き起こると、無一郎くんが顔をのぞきこんできた。

「嬉しかったよ。すごく」
「…本当?」

「うん。襧豆子ってさ、僕と兄さんを間違えたことないよね。鼻が利く炭治郎はともかく、竹雄くん達やクラスメイトも、絶対みんな何回かは間違えるのに。襧豆子だけは一回もないでしょ」

「言われてみれば、確かにそうかも」

「何か見分けるコツでもあるの?」
聞かれて首をかしげた。そういえば、何で二人を見分けているのだろう。

「…えっと、なんだろう…無一郎くんと有一郎くん、確かにそっくりなんだけど、よーく見たら違うよ?」

「どこが?」

「…うーん…有一郎くんはね、テキパキしてそうというか、しっかりしてそうな感じで、無一郎くんは…」そこまで言いかけて、慌てて口をつぐんだ。すぐに察した彼が、いたずらっ子な笑みを浮かべる。

「僕は何?ボーっとしてるとか?」

「そ、そんなこと…」
「どんくさそうとか?」

「もうっ、そんなこと言ってないでしょ」

「じゃあ何?」
楽しそうにくすくすと笑いだす無一郎くんは、たまにこうして私をからかってくる。からかわれてるのに嬉しいだなんて。やはり私は彼を好きなのだと、再認識してしまう。

ボーっとしてて、のんびりしてそうで。
たまにこうしてイジワルだったりするけど。

「…優しそうな感じ…かな」

そう小さくつぶやいた。

私の手を包む彼の手が、より一層強くなって。無一郎くんの頬が苺みたいに赤くなってて。変なことでも言ったのかと不安になってると、ふいに彼の足が止まった。
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