同級生二人の短いクリスマス

───街路樹に巻き付けてある電飾が煌めいている。街も人も、お店も、目に入る光景すべてがクリスマス一色に包まれていた。笑顔で溢れる街をさらに盛り上げるように、ふわふわと舞い降りる雪。ホワイトクリスマスだなんて浮かれそうなところだけど、今はそれどころじゃない。

繋がれたままの手。
さっきの無一郎くんの言葉。

手、離さないの?とか。彼女だなんて嘘言っていいの?とか。聞きたくてたまらないのに、言葉が出てこなかった。隣にいる横顔をそっと見つめると、前を向いたまま彼が話しだす。

「襧豆子。さっきはありがとう」
「…?なにが?」

「僕の名前、呼んでくれて」
言葉の意味が理解できなかった。名前を呼ぶことに、お礼を言ってもらう理由なんてあるのだろうか。

「…どういう意味?だって無一郎くんでしょ?あ、でもさっきの人たちには、感じ悪かったかもしれないよね…間違えたのだってわざとじゃないのに。でも無一郎くんあのとき、なんか一瞬つらそうに見えて…」

前を向いていた彼が、穏やかな微笑でこちらを向いた。視線が交わると、また体が熱くなってくる。
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