同級生二人の短いクリスマス

「───ごちそうさまでした」
緊張で全く味のしなかった食事を終えると、襧豆子が律儀に手を合わせた。僕もならって手を合わせる。

「出る前に、お手洗い行っておくね」
手洗いに向かう襧豆子の背を確認すると、すばやくレジへ向かって会計を済ませた。奢られることを彼女は嫌がるかもしれないが、今日ぐらいはカッコつけさせてほしい。

襧豆子がすぐ気づけるように、入口のすぐ隣で待つことにした。他の客の邪魔にならないよう配慮しながら佇んでいると、テーブル席の方から視線を感じる。女性が二人組、手持ちのスマホと見比べながら、こちらを凝視していた。

なんだかめんどくさい予感がする。おもむろに立ち上がったと思いきや、やはりというか声をかけてきた。

「あのー…もしかして、時透さんですか?前に将棋でテレビに出てた…」

「………そうですけど」

「きゃー!やっぱり!」
「すごい!本物だぁ!」
甲高い声を上げながら、女性たちが手を取りあって喜んでいる。学園の将棋部の印象に関わるからと、こういう場面では愛想よくしておくように。そう部活の顧問から指導を受けていた。

よりによってデートの最中に…。

ため息をついても、目の前で興奮している女性たちは気づいてなどいなかった。
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