同級生二人の短いクリスマス

「…襧豆子、気づいてない?」

「?なにが?」

「ここ、多分カップルシートだよ」
「カップルシート?」
ほら、と周りを見るように首を動かした。体を密着させたり、食事を食べさせてあげていたりと、どう見ても友達同士でない雰囲気の男女がそれぞれの席についている。やっと気づいた襧豆子の顔が、またたく間に赤く色づいてきた。

「…こ…ここが噂のカップルシート…!」
「そう。噂のカップルシート」
そう返したものの、噂なのかどうかは知らない。

「わ、私…こういう席、座ったの初めて…」

「…僕も初めて」
初めてじゃないなんて言われたら、襧豆子に詰め寄るところだ。せわしなかった動きがぴたりと止まって、体を縮こませている。

「なんだか緊張してきちゃった…」
「なんで?普通に座ってたらいいじゃん」

「だって、周りカップルの人たちばっかりで…」
「みんな周りなんて見てないし、平気だよ。それとも、僕とカップルに見られるのがそんなに嫌?」

「!?そそ、そ…そ、そんなわけじゃないけど」
本気が九割、冗談が一割でそう問いかける。真っ赤になった襧豆子の両肩が跳ね上がって、ますます小動物のようだ。慌てる様子を見ていても飽きないけれど、僕だけが意識していても進まない。襧豆子にも僕を意識してもらわないと困る。

「あ、そっちにメニュー表あるんだ。見せて?」

「へ!?見せ………何を!?」
「………メニュー表」

何をって何をだろう。首を傾げていると、すぐに勢いよくメニュー表がお腹に突きつけられた。
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