同級生二人の短いクリスマス
*無一郎side*
今にも雪が降りそうな空を見上げる。
墨汁と水が混ざりあったような寒々しい色だ。
ジャケットのポケットに手を入れて、少しの暖を取りながら竈門ベーカリーへの道を歩く。どこからともなく聞こえるのは、今の時期にしか流れない音楽。心が弾むような音楽に耳を傾け、すれ違う人の表情も声も、幸せに満ちていた。
竈門ベーカリーの建物が近づいてくると、誰かが入口に佇んでいる。わざわざ外に出て待ってくれてるのだと思いきや、すぐに意中の彼女ではないと気づいた。
「あ!むいくーん!」
「…六太くん!?」
襧豆子と炭治郎の弟であり、竈門兄弟の末っ子。六太くんがこちらに向かって、笑顔で手を振っていた。
「六太くん、こんにちは。僕の方だってよくわかったね」
「へへー。むいくんがくるっておねえちゃんがいってたから」
「なるほど。それでか」
幼い頃から親同士の交流があったおかげで、竈門家の兄弟みんなとは面識がある。僕と兄さんの双子当てっこゲームは、竈門家に訪れたときの定番な遊びだ。六太くんにいたっては、彼が赤ちゃんの頃に抱っこさせてもらったこともある。
「おねえちゃんね、むいくんのことずっとまってるよ。むいくんがきたらすぐわかるように、ぼくまっててあげたの」
「え、そうなの?」
「おねえちゃんよんできてあげる!」
威勢のいい声を残し、六太くんが店の中へ引き返して行った。急いでスマホを取りだし時刻を確認する。今は夕方の四時五十五分。五時に迎えに行くと伝えてあるから、落ちあうにはちょうどいい時刻だ。カランとドアノブが再び鳴ると、今度は茂くんに花子ちゃん、竹雄くんが顔をだしてきた。
「むいくん、ひさしぶりー!」
「こんにちは。久しぶりだね」
襧豆子や炭治郎もだが、竈門家の子ども達はみんな人懐っこい。思いがけない賑やかなお出迎えに顔がほころびる。
「むいくん、今日ゆうくんはいないの?」
「ばか。今日はむいくんとおねえちゃん、デートだって言ってたじゃない」
「どっちから誘ったの?やっぱりむいくん?」
「もう!野暮なこと聞かないの!」
「………あはは」
茂くんや竹雄くんをたしなめる花子ちゃんは、姉の襧豆子によく似ている気がした。僕たち兄弟のことを、むいくん、ゆうくんと親しみを込めて呼んでくれる。竈門家に来ると、まるで自分も大家族の一員になった気分だ。いつか本当にそうなりたいと願っているのは、兄さんにも内緒にしている。
今にも雪が降りそうな空を見上げる。
墨汁と水が混ざりあったような寒々しい色だ。
ジャケットのポケットに手を入れて、少しの暖を取りながら竈門ベーカリーへの道を歩く。どこからともなく聞こえるのは、今の時期にしか流れない音楽。心が弾むような音楽に耳を傾け、すれ違う人の表情も声も、幸せに満ちていた。
竈門ベーカリーの建物が近づいてくると、誰かが入口に佇んでいる。わざわざ外に出て待ってくれてるのだと思いきや、すぐに意中の彼女ではないと気づいた。
「あ!むいくーん!」
「…六太くん!?」
襧豆子と炭治郎の弟であり、竈門兄弟の末っ子。六太くんがこちらに向かって、笑顔で手を振っていた。
「六太くん、こんにちは。僕の方だってよくわかったね」
「へへー。むいくんがくるっておねえちゃんがいってたから」
「なるほど。それでか」
幼い頃から親同士の交流があったおかげで、竈門家の兄弟みんなとは面識がある。僕と兄さんの双子当てっこゲームは、竈門家に訪れたときの定番な遊びだ。六太くんにいたっては、彼が赤ちゃんの頃に抱っこさせてもらったこともある。
「おねえちゃんね、むいくんのことずっとまってるよ。むいくんがきたらすぐわかるように、ぼくまっててあげたの」
「え、そうなの?」
「おねえちゃんよんできてあげる!」
威勢のいい声を残し、六太くんが店の中へ引き返して行った。急いでスマホを取りだし時刻を確認する。今は夕方の四時五十五分。五時に迎えに行くと伝えてあるから、落ちあうにはちょうどいい時刻だ。カランとドアノブが再び鳴ると、今度は茂くんに花子ちゃん、竹雄くんが顔をだしてきた。
「むいくん、ひさしぶりー!」
「こんにちは。久しぶりだね」
襧豆子や炭治郎もだが、竈門家の子ども達はみんな人懐っこい。思いがけない賑やかなお出迎えに顔がほころびる。
「むいくん、今日ゆうくんはいないの?」
「ばか。今日はむいくんとおねえちゃん、デートだって言ってたじゃない」
「どっちから誘ったの?やっぱりむいくん?」
「もう!野暮なこと聞かないの!」
「………あはは」
茂くんや竹雄くんをたしなめる花子ちゃんは、姉の襧豆子によく似ている気がした。僕たち兄弟のことを、むいくん、ゆうくんと親しみを込めて呼んでくれる。竈門家に来ると、まるで自分も大家族の一員になった気分だ。いつか本当にそうなりたいと願っているのは、兄さんにも内緒にしている。