同級生二人の短いクリスマス

十二月二十四日。
二十四の数字を囲っているのは、お気に入りのペンで描かれたピンクのハート。明後日にまで迫っているこの日は、片思いしている彼とイルミネーションを見に行く日だった。

終業式だった今日は学校が終わるのが早くて、無一郎くんとほとんど話すことができなかった。それでも帰り際、私の席に向かってくる彼の姿も『また二十四日に』と声をかけてくれた言葉も、夢なんかじゃない。

二人きりで会うだなんて本当に初めてだ。
それもクリスマスイブの夜だなんて。

天井を仰いで、 なんとなしに壁紙を見つめてみる。白い壁紙がキャンバス代わりになって、ふわふわと浮かんでくるのは、はにかむ笑顔の彼だった。金平糖がじんわりと溶けていくみたいに甘くて、彼への想いが胸の中に広がっていく。強く抱きしめて、ぺしゃんこになったクッションに顔を埋めた。


…可愛くなりたいな。

ころんと右へ寝返りをうってみた。もう一度卓上カレンダーを見つめた後に、次は左側へ重心をうつすと、チェック柄のカーテンが見えた。寝返りを覚えた赤ちゃんのように、ころころと体を揺らしていく。

体を起こし、先ほど結んだ三つ編みに手を伸ばした。崩さないように優しくふれてみると…うん、大丈夫そうだ。

『横になってぐしゃぐしゃになったとき、直すの大変じゃない』

助言なのか冷やかしなのかわからない梅ちゃんの言葉を意識してるわけじゃない。横になっても崩れない髪型を考えたわけじゃない。三つ編みのハーフアップが可愛かったから。ただそれだけなのだ。

沸々と熱を帯びてきた頬と体。
手で仰いで微々たる風を送ってみるも、そんなもので冷めるわけなかった。
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