中等部男子の長い昼休み

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床を打ちつける上履きの音が、階段から踊り場へ、上から下にかけて響き渡る。足の裏で器用に方角を変えると、キュッと擦り合わせた音が上履きから鳴る。

先頭を走る無一郎が、階段の終わりが近づく数段目のところをジャンプで降りた。その振動で起こった地響きが、後ろを走る俺やみんなにも伝わってくる。無一郎、俺、錆兎。その後ろを竹内、愈史郎、千寿郎が続く。

廊下は走らない。そんな規則を今言ったところで、絶対誰も聞きやしない。



「やばいやばいやばいやばい!!!あれを誰かに見られるのはまずい!恥ずかしい!」

「ふざけてるからだろ!下に人がいて当たってたらどうする気だ!」

「あれを恥ずかしいっていう自覚はあったのか」

「だって愈史郎が追いかけてくるから!」

「人のせいにするな!元はと言えばお前が!」

「…せ、先生に先に拾われたら、間違いなく没収されますよ!」

まとまりの一切ない不協和音のような足音で、屋上から一階まで一気に走り抜けて行く。外履きに履き替え玄関を飛び出すと、雑誌を落としたという中庭へ向かった。

太陽が完全に顔を出している今の空は、外に出るのにちょうどよい天気だ。もう少し早くこの空になっていれば、中庭に誰かいたかもしれない。けど、昼休みはもうすぐ終わりを迎える。そして、灰色から青色へ塗り替えられたのは、ついさっき。タイミングだけでいうと、いま中庭に人がいる可能性は低いはず。

速度を上げる無一郎の背中について行くと、すぐに目的地へと辿り着いた。
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