中等部男子の長い昼休み

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目を閉じると、ランドセルを背負った幼い自分と、幼い襧豆子がいた。二人きりになれたのは、小学生の頃。無一郎が風邪で早退した、あの日の帰り道だけ。秋から冬へと移り変わる、ちょうど今ぐらいの時期だった。

前を歩く襧豆子がたくさん話しているのに、相槌しか打てなかった自分。

歩を進める襧豆子のランドセルが揺れると、側面に付けられたうさぎのキーホルダーも一緒に揺れだした。

うさぎをジッと見ていると、時折襧豆子が後ろを振り返ってくる。そうなると途端に前が見れなくなって、今度は地面の石ころをジッと見始める始末だ。

我ながら情けない思い出だと思う。
それでも自分の一部として、大切にしまってある。

初恋の女の子の結ばれる相手がアイツなら。
胸に残る思いは何一つない。


目を閉じたまま、もう一度頷いた。その瞬間、三人分の叫び声が鼓膜を貫いてくる。一気に現実に引き戻された感覚に陥り、声のした方角へ顔を向ける。

先ほどまで鬼ごっこをしていた三人が、屋上の手すりから上半身だけを乗りだしていた。
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