中等部男子の長い昼休み

「とりあえず、これ見てよ」
そう言って雑誌のページを開いて見せてくる。また風でページがめくれない内に紙面を指で挟んだ。存在をアピールするかのように、デカデカと描かれた陽気なロゴを読み上げる。

「女子が選ぶ…理想の告白シチュエーションランキング…?」

「やっぱり予習はしといた方がいいよね。で、どれがいいと思う?花束を渡しながらが第三位で、夜景とか綺麗な場所での告白が第二位で、第一位が帰り際なんだってさ!」興奮気味に話しだす無一郎から雑誌を受けとると、ランキングとやらの説明書きに目を通す。

ふざけた表紙だから内容もふざけてるのかと思ったら、意外にも的を得ている内容だったから驚いた。花束や夜景は告白というよりプロポーズに近い気がするが…。ロマンチックな演出に憧れる女子からの支持は高いらしく、『タイプじゃない男性からでもドキリとする』と書かれてあるコメントがやけにリアルだ。


一方で、第一位の帰り際というコメント欄には『返事がNOの場合、帰り際なら断りやすい』と冷静かつ的確なコメントが妙に納得させる。

「…すっげーリアルだな。こんなの何が正解かわかんねーじゃん。結局相手の立場を考えると、帰り際がいいのか?でもイルミネーション見に行くんだよな?それならイルミネーションの前でとかのがいいと思うけど…」

「やっぱり?襧豆子、花が似合うから花束も考えたんだけどさ。よくよく考えたら、花束持って移動するの大変だよなって気づいて」

「…気づいてよかったな」

「テレビとかによくある、指パチンッてしたらお店の人が持ってきてくれるのあるじゃん。あれも一応考えたんだけど…」

「お前あれやる気か!?」
首を傾げ、パチンッと指を鳴らす弟を見つめ返した。それでウエイトレスを呼ぶ無一郎を不覚にも想像してしまう。花束を抱えたウエイトレスが奥から出てきて、それを襧豆子に渡した後にそのままの流れで愛の告白をする。

だめだ。ギャグにしか見えない。

コイツ一人でデートプランなんて考えたら、襧豆子が恥をかくんじゃないだろうか。本気で心配になったところで無一郎がぽつりとつぶやく。
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