中等部男子の長い昼休み

ダサいとは何だと同じ顔が睨んできた。
雑誌と弟を交互に見て浮かんだのは、レジにこれを持っていくコイツの姿だった。俺には真似できない勇気だ。真似をする気は一切ないけれど。

「………お前がこういうの読むなんて意外だな」
「そう?」
母さんへメッセージの返信を終えた無一郎が、スマホをポケットに戻した。

「まだ読みかけなんだから返してよ」

「あ、あぁ…これ、本屋で買ったのか?」
「?そうだけど」

「…他にもこういうジャンルの雑誌あっただろ」

なのになぜこれを選んだ。

言わずとも俺の思考を読み取った無一郎が、あっけらかんとした表情で答える。

「それが一番信用できそうだったんだよ」
「どう見ても一番胡散臭くないか!?なんだよこの気持ち悪いフレーズの嵐は!声に出すのも恥ずかしかったぞ!」

「勝手に読んだの兄さんだろ」
いい加減返してと手を伸ばしてくる弟へ、雑誌を渡した。一体弟に何があったのだろう。雑誌選びのセンスはともかく、こういった類の本を読むなんてキャラ崩壊を超えている。

言わずとも、またもや俺の思考を読み取った無一郎が事の経緯を話し出した。先ほどの表情と打って変わって、ほのかに頬を染めて恥ずかしそうにしている。

ぽつりぽつりと語る内容は、驚きはしたものの、胸にすんなりと浸透してくるものだった。ずっと足踏みしていた場所から、やっと抜け出る気になったのかと嬉しくも思った。
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