魔女の秘密
「やけに遅かったな。委員会、長引いたのか?」
「ううん、予定時刻にはおわってたよ。ただちょっとしたハプニング。兄さんこそ、もうとっくに家に着いてるのかと思ってた」
「…こっちもちょっとな」
夕焼け色に染まりだす街を、赤とんぼが一匹横切っていく。同じ学年に同じ将棋部に、瓜二つの双子の兄弟。毎日と言っていいほど帰りは一緒だけど、たまにこうして別になることもあった。無一郎が歩きながら、ポケットをまさぐり始める。
「兄さんこれ、下駄箱に入ってたよ。気づかなかったでしょ」二つに折りたたまれた小さな紙を差し出され、何気なく受け取る。すぐに中を開くと、いわゆる"呼び出し"の文面がシンプルに綴られていた。
「なんだこれ…いつ入ってたんだ」
「今日の朝か昼か知らないけどさ。"放課後、体育館裏で待ってます"ってあるでしょ。その紙書いた子、痺れ切らして今日僕のとこに来たよ。兄さんと間違えて」
予定より帰りが遅くなった理由を、無一郎から遠回しに告げられる。呼び出しに気づかない自分を棚に上げ、焦る気持ちを隠したまま確認を取った。
「おい、もちろん断っただろうな」
「断ったよ。お互いこういうことがあったときは、そうする約束だったじゃん」
俺の代役で告白を受けた弟は、当てつけを込めたように盛大なため息を吐いた。
「ううん、予定時刻にはおわってたよ。ただちょっとしたハプニング。兄さんこそ、もうとっくに家に着いてるのかと思ってた」
「…こっちもちょっとな」
夕焼け色に染まりだす街を、赤とんぼが一匹横切っていく。同じ学年に同じ将棋部に、瓜二つの双子の兄弟。毎日と言っていいほど帰りは一緒だけど、たまにこうして別になることもあった。無一郎が歩きながら、ポケットをまさぐり始める。
「兄さんこれ、下駄箱に入ってたよ。気づかなかったでしょ」二つに折りたたまれた小さな紙を差し出され、何気なく受け取る。すぐに中を開くと、いわゆる"呼び出し"の文面がシンプルに綴られていた。
「なんだこれ…いつ入ってたんだ」
「今日の朝か昼か知らないけどさ。"放課後、体育館裏で待ってます"ってあるでしょ。その紙書いた子、痺れ切らして今日僕のとこに来たよ。兄さんと間違えて」
予定より帰りが遅くなった理由を、無一郎から遠回しに告げられる。呼び出しに気づかない自分を棚に上げ、焦る気持ちを隠したまま確認を取った。
「おい、もちろん断っただろうな」
「断ったよ。お互いこういうことがあったときは、そうする約束だったじゃん」
俺の代役で告白を受けた弟は、当てつけを込めたように盛大なため息を吐いた。