魔女の秘密
無性に小石を蹴飛ばしたい。そんな気分が稀に訪れる。まさに今がそうだった。視線を地面に落としても、平らなアスファルトの上には何も見当たらない。途中で補修をされたのか、灰色の濃い面積と薄い面積で分かれた継ぎ目が見える。誰かと歩いてるときは気にもとめないのに、一人だとどうでもいいところに目がいってしまうものだ。
継ぎ目の上を何となしに歩く。灰色の濃い面でも薄い面でもなく、継ぎ目の上をまっすぐに。一人だとこんな無意味な遊びを生んでしまうものだ。
夕焼けが街を包み始める。思っていたより帰りが遅くなってしまった。店が建ち並ぶ通りを過ぎると、自宅までの道のりは一本道だ。はやく帰りたいと足が速まることはなかった。むしろ、まだ帰りたくなかった。
気分が悪い。
こんなに大きな舌打ちをしても、一人なのだから不快に思う人間はいないのだ。それでも気が晴れることはなく、罪のない夕日を睨んだ。
皮肉の一言でも残せばよかったと、ほんの少しの後悔が胸に引っかかる。一方で、後々の厄介事に繋がらないようにするためには、あれでよかったのだとも思う。
「兄さん!」
後方から名を呼ぶ声と足音に気づき、振り返る。走って自分を追いかけてきていたのは、双子の弟である無一郎だった。
継ぎ目の上を何となしに歩く。灰色の濃い面でも薄い面でもなく、継ぎ目の上をまっすぐに。一人だとこんな無意味な遊びを生んでしまうものだ。
夕焼けが街を包み始める。思っていたより帰りが遅くなってしまった。店が建ち並ぶ通りを過ぎると、自宅までの道のりは一本道だ。はやく帰りたいと足が速まることはなかった。むしろ、まだ帰りたくなかった。
気分が悪い。
こんなに大きな舌打ちをしても、一人なのだから不快に思う人間はいないのだ。それでも気が晴れることはなく、罪のない夕日を睨んだ。
皮肉の一言でも残せばよかったと、ほんの少しの後悔が胸に引っかかる。一方で、後々の厄介事に繋がらないようにするためには、あれでよかったのだとも思う。
「兄さん!」
後方から名を呼ぶ声と足音に気づき、振り返る。走って自分を追いかけてきていたのは、双子の弟である無一郎だった。
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