境界線[上]

*有一郎side*

俺と無一郎でコンビニにいるとき、急に後ろから声をかけられた。振り向くと、同年代ぐらいの男が立っていた。特徴的な丸いメガネをかけている。その姿には見覚えがあった。襧豆子を見に来ていた野次馬連中の中にいた一人だ。

「あの、時透くん…たち、だよね?キメツ学園の」

「…そうですけど」

「突然ごめんね。僕、二年の藤井っていうんだけど…君たち竈門さんと親しかったよね?少しだけ話いいかな…?」

戸惑いがちに話しだす内容を聞いて、俺と無一郎はコンビニを飛びだしていた。

学園三大美女の一人を誘い出して、来てくれる方に何千円。告白を受け入れてくれる方に何万円。告白シーンを撮影したらネタにもなるし、写真でも撮って安く売れば御の字だと。藤井さんが話してくれた内容は、なんとも反吐が出る内容だった。ガラの悪い同級生に暴力で脅され、友人は断ることができなかったといった。

友人の代わりに謝罪をする藤井さんも、強要され巻き込まれた倉田さんも被害者だ。もちろん、悪趣味な遊びのターゲットにされた襧豆子も。

小さくなっていく藤井さんの声を背に、俺たちは学園の校舎裏へ急いだ。

先生たちが駆けつけたときには、あらかたの事は済んでいた。夏休みの学園、校舎裏で。土下座している生徒に棒立ちの生徒、腕をくんで睨みつける生徒がいる。

そんな光景を目の当たりにした先生たちから、仲良く職員室行きの切符を渡された。
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