境界線[上]

賭け…撮影…。
詳細はわからずとも状況は把握できる。私は見事に騙されてここに呼ばれたらしい。そして、嫌な役目を無理やり担わされたらしい倉田さんは、未然に防いでくれようとしている。初対面ながらにそれが伝わった。少なくとも、賭けと撮影は失敗に終わったに違いない。

「馬鹿おまえ…っ!」
「余計なこと言ってんじゃねぇよ!」

怒鳴り声と共に、体に大きな衝撃を受けた。突き飛ばされた倉田さんが、私に向かって後ろ向きで倒れてきた。受け止めようにもできるわけがなくて、そのまま一緒に倒れこんでしまう。腕に背中、お尻に熱い痛みが走る。夏の暑さで熱を蓄えた地面が、なおで痛みを感じさせた。

「…っ…竈門さん…!大丈夫…!?」
倉田さんがすぐに離れてくれたけど、すぐには起き上がれなかった。自らの足でこの場所に来たというのに、どうして自分は今ここにいるんだろうと不思議でならなかった。

やっぱり一人でも夏祭りに行けばよかった。

クラスメイトに会えていたかもしれないし、今頃真菰ちゃん家にだって向かえていたのに。騙されて、のこのことこんな場所まで来た自分が恥ずかしい。一言文句を言ってやりたいのに、口を動かすどころか顔を上げることができなかった。
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