境界線[上]

「………竈門さん!」
突然名前を呼ばれ、つい立ち止まってしまった。倉田さんが焦ったような声音で、困惑した私の元へ走ってくる。一気に距離が詰まると、理由はわからずとも緊迫した様子が伝わってきた。

「竈門さん!ごめんなさい、帰ってください!」

「…へ?」
呼んでおいたくせに…帰って?理解が全く追いつけなかった。不快感が顔に出てしまっても、かまわず倉田さんは続けた。

「本当にごめんなさい!あんな言い方したから来てくれたんですよね?でも…」言葉は最後まで聞けなかった。倉田さんの背後から、罵声に近い大声がかぶさってきた。

「倉田!何ネタばらししてんだよ!」
「後ちょっとだったろうが!!」

そう怒鳴りながら出てきたのは、またしても知らない男の子が二人。悲鳴嶼先生や宇髄先生ほどじゃなくても、二人ともガタイが良く背も高かった。頭の中が疑問符でいっぱいになっていく中、自然と後ずさりをしていた。土を踏む音に気づいたのか、二人の視線がこちらに移る。

「こんなのやっぱり良くないよ!騙して呼び出して、賭けとか撮影とか、勝手に…」

倉田さんの口から不愉快な言葉が飛びでてくると、それで覚った。
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