境界線[上]

こういうとき、いの一番に応対するのはいつも母の役割だった。けど、今家には私しかいない。お兄ちゃんはカナヲちゃんとデートに行ってるし、両親は下の弟たちを連れて市民プールに行っている。

私にもお泊まりという予定が入っていたわけだから、今日は双方とも帰りが遅い。

家族への客人か、もしくは宅配便か。

返事をしてドアを開けると、知らない男の子が立っていた。私と同年代だろうか。想像していたどちらでもなかったことに、いささか驚く。しかし私よりも、訪問相手の男の子の方が驚いていた。

肩が跳ね上がり、目は泳いでいて視線が合わない。唇を噛みしめて何かを言い淀む姿は、明らかに挙動不審だ。訪ねてきたはずなのに、なぜ困惑した表情を浮かべているのだろう。

もしかして、出てこない方がよかったのではないか。そう思ってしまうほどの反応。

まるで、
誰もいないことを期待してたような───。
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