境界線[上]

三人で夏祭りに赴いたことはあるが、もう何年も前。まだ小さい子どもの頃だった。

美味しそうな匂いと、活気あるかけ声が行き交う祭り会場。赤い提灯に見惚れていると、よく二人に手を引かれて歩いた。
両脇を立ち並ぶ屋台は、目移りしてしまうほど魅力的で、手持ちのお金と相談しながら買うものを選んだ。想像以上に大きかったりんご飴は、固すぎて噛めないと有一郎くんが苦戦しながら食べていた。それを後目に、見せつけながら焼きそばを食べる無一郎くんと、その隣で私はヨーヨーをついていた。

「………ふふっ」
思い出し笑いがこぼれる。夏の熱気に人垣の熱気が加わって、汗をかきながら過ごした夏祭り。子どもの頃の話なのに、昨日のことのように思い出せた。


三人で会うことは自然となくなっていった。
二人に対して線引きをするようになったのは、高等部に上がる前だったろうか。誰かに駄目だと言われたわけでもないのに、二人に連絡をすることすら躊躇うようになってしまった。

決して嫌いになったわけではないし、みんなが一緒にいるときは何も思わないのに、胸の奥に引っかかる違和感のようなものが私を二人から遠ざけた。

自分たちのことを世間ではお年頃なんて言うんだろう。それは自身の体の変化で、十分身に染みてわかっていた。いつまでも子どものように…というわけにはいかないのだと、自然とそう思えるようになった。


スマホを切ると、画面が真っ暗になる。
心なしか寂しそうな顔をした私が写っていた。

誰かと行くのは諦めよう。

そう結論づけ宿題を再開しようとすると、インターホンの音が部屋に入りこんできた。
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