境界線[上]

───高等部一年の教室。

昼休みになると、廊下側の窓に他学年の男たちが詰め寄ってきて、その視界を埋めつくす。誰が決めたのか知らない三大美女とやらのせいで、襧豆子を見にわざわざ教室へ訪れてくるのだった。

頬を赤く染めて見惚れていたり、ひそひそと何かを話し合いながら指を指してきたり、襧豆子の名前を呼んで手を振ってきたりと様々だった。

「今日もすごいな」
前の椅子に座ってる錆兎が、苦虫を噛み潰したような顔で言った。昼食はいつも僕の机で一緒に食べていて、弁当の包みを開いていく。そして気にかけるように、襧豆子のいる席へと視線を移した。

友人の帰りを待っているんだろう。襧豆子は席に一人で座っていた。購買部から真菰が戻るのを待たずとも、いつもは先に食べ始めているのに。居心地悪そうに椅子に座って、行き場のない視線は俯くしかできないらしい。監視されているかのような好奇の目に、ひたすら耐えている様子だ。

「動物園のパンダ状態だな…」

「いい加減うっとうしいね、これ」

「野次馬根性の奴がほとんどだろうけどな…って、おい」

立ち上がり、ゆっくり襧豆子の席へ近づいてく。いくつもの視線がまとわりついてきたが、かまわず話しかけた。
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