境界線[上]

*無一郎side*

高等部に上がってすぐ、襧豆子は学園三大美女とやらに選ばれた。三大美女というものが何なのかよくわからないけど、綺麗な女の子のことを指してはいるんだろう。

確かに襧豆子は中等部の頃から…いや、昔から可愛い容姿をしていた。最近はさらに綺麗になったと思うし、以前にも増して垢抜けた気がする。だから三大美女とやらに選ばれるのも、ふむ確かにと納得はいく。

けれど…。
嫌でも耳に届いてくる雑音に眉をしかめる。


どこ?
ほらあそこ。

あのリボンつけてる、黒髪ロングの…。

あの子が新しい三大美女。

うわっめちゃくちゃ可愛い…!
美人…。

彼氏いんのかな。
話しかけてこいよ。

ばか、お前じゃ無理だよ。




内緒にする気のない内緒話。
この耳障りな声たちも、襧豆子が下衆な目で見られていることも、僕には充分すぎるほどの不快感だった。

まるで砂糖に群がる蟻だ。
本当に蟻なら、今頃殺虫剤でも撒き散らしているのに。
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