好きな子

順番が回ってきて白線の前に立つ。
躊躇してしまうが、事故防止の為だ。そう自分に言い聞かせながら襧豆子と肩を組む。襧豆子の手が、自身の背中に回された。そっと体操服を掴んでいる手に、少しの戸惑いを感じる。

「いいから、もっと強く掴んどけ」

「う、うん…」
後ろから同じチームのペアが走ってくる。空いてる手で無事にバトンを受けとり、襧豆子と声を合わせて走り出した。


襧豆子は女子の中では、比較的運動神経がいい。半周まで来たところで、その異変に気づく。


………いやに熱くないか?
隣の襧豆子を見ると、頬がりんごのように赤く、目が心なしか虚ろになっている。

照れてるとかじゃない。これは…。

察した瞬間、襧豆子の体が前のめりに倒れていく。繋がれた紐から足に重力が伝わって、自身の体も一緒に倒れる。ゆっくりと景色が傾いていく中、地面と襧豆子の間へ自身の腕をねじ込んだ。
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