好きな子

*襧豆子side*

「これっていいのかな?」
二人よりも一歩後ろで走りながら、その背中に声をかけた。一つに縛られた黒髪が、前でゆらゆらと揺らめいている。

「いいんじゃねぇの」

「怒られるとしたら、僕たちだけだよ」
振り向きながら二人が答えた。すぐに前に向き直った背中を見ていると、幼き日の二人と重なる。三人でこうして手を繋いでいるのも、一緒に走っているのも、いつ以来だろう。今のこの瞬間だけ、あの頃に戻ったような気がした。

子どもの頃、ただがむしゃらに。
ただ遊ぶことだけに夢中だった日々。
その記憶の中には、いつだって二人がいた。
いつも三人一緒だった。

懐かしい気持ちが胸に広がっていく。

「…ねぇ!結局借り物って何なの?」

「「………………………………」」

「ねぇってば!!!」
「「秘密!」」

いじわるで教えてくれないわけではなさそうだ。もしかしたら二人の借り物というのは"幼なじみ"なのかもしれなかった。それなら自分を呼びにきたのにも理由がつく。

口を揃えて叫ぶ息のぴったりさは、やはり懐かしいと思えて、思わず笑ってしまった。
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