好きな子
「三人とも!このままだとビリだぞ!!!」
目が覚めたかのように、有一郎と無一郎、襧豆子が、はたと周りを見渡す。同じタイミングで動く三人を見て、そういえばこの三人幼なじみだったなと、なぜか今思い出した。
状況を理解したのか、やっと双子は言い争いを止めた。
「!やべっ!もう行こう!」
「襧豆子!」
「わっ!」
襧豆子の右手を有一郎が、左手を無一郎が掴んだ。両手を塞がれた襧豆子が、あたふたしながら靴を履いて、引っ張られるように走り出す。三人並んで走っていく後ろ姿を見て、力がドッと抜けていくのを感じた。
「…あれってありなんでしょうか」
「さぁな。知らん…」
「全く、自身の欲しか見えていない。まるでガキだな」
「愈史郎…それお前が言う?」
揺らめく勝利のビーナスを見つめながら竹内が言った。竹内に異論を始めた愈史郎の怒声を聞きながら、カメラを操作している真菰に話しかける。
「本当、写真好きだな」
「ふふふ〜いいのがいっぱい撮れたよ」
「さっきの三人も撮ったのか」
「もちろん」
やっとカメラから顔を上げた真菰が笑顔で言った。
「この写真、あの二人に見せたら高く買ってくれるかな?」
「…やめてやれよ」
からかいたい気持ちはわかるが。
口には出さず心の内で留めた。
「結局、借り物って何だったんでしょう…」
千寿郎の疑問の声は、騒がしい生徒たちの歓声でかき消されていった。
目が覚めたかのように、有一郎と無一郎、襧豆子が、はたと周りを見渡す。同じタイミングで動く三人を見て、そういえばこの三人幼なじみだったなと、なぜか今思い出した。
状況を理解したのか、やっと双子は言い争いを止めた。
「!やべっ!もう行こう!」
「襧豆子!」
「わっ!」
襧豆子の右手を有一郎が、左手を無一郎が掴んだ。両手を塞がれた襧豆子が、あたふたしながら靴を履いて、引っ張られるように走り出す。三人並んで走っていく後ろ姿を見て、力がドッと抜けていくのを感じた。
「…あれってありなんでしょうか」
「さぁな。知らん…」
「全く、自身の欲しか見えていない。まるでガキだな」
「愈史郎…それお前が言う?」
揺らめく勝利のビーナスを見つめながら竹内が言った。竹内に異論を始めた愈史郎の怒声を聞きながら、カメラを操作している真菰に話しかける。
「本当、写真好きだな」
「ふふふ〜いいのがいっぱい撮れたよ」
「さっきの三人も撮ったのか」
「もちろん」
やっとカメラから顔を上げた真菰が笑顔で言った。
「この写真、あの二人に見せたら高く買ってくれるかな?」
「…やめてやれよ」
からかいたい気持ちはわかるが。
口には出さず心の内で留めた。
「結局、借り物って何だったんでしょう…」
千寿郎の疑問の声は、騒がしい生徒たちの歓声でかき消されていった。