好きな子
幼なじみといえど、男二人と一緒にいてこの有様。一切の警戒心ゼロときてる。いい意味で言えば気を許してくれているということだが、悪い意味で言えば、異性として見られていない。嬉しくもさみしくもあり、複雑な気持ちだ。
ふいに窓の外へ視線をうつした。
隣で眠っている襧豆子が窓に反射されて映る。
外を見ると、小さな男の子が二人と、女の子が一人。仲睦まじい様子で歩道を歩いている姿が見えて、それは一瞬にして流れて見えなくなった。
あれぐらいの年齢だっただろうか。
それよりもっと前だったか。
襧豆子のことを好きだと気がついたのは。それは意外にもすんなりと、自分の中で馴染んでいった。
どこが好きとか、何がきっかけでとか。そんな細かいことは上手く言えないが。
強いて言うならば───。
襧豆子が笑ってると嬉しかった。
名前を呼ばれるとくすぐったかった。
そばに居てくれるだけで優しい気持ちになれた。
本当にそんな単純なものだった。
まだ眠っている襧豆子を窓越しに見つめる。いまだに頭はゆらゆらと揺れていて、あれでよく起きないなと思う。
視線を正面に戻すと、見覚えのある交差点が見えた。バスが大きく揺れる。瞬間、左肩にやわらかい衝撃が降りかかった。襧豆子の長い黒髪が、シャツの下から伸びる自身の腕を撫でた。俺の肩に頭を預けても、尚起きないで気持ちよさそうに寝ている。
………人の気も知らないで。
そっと横目で隣を見る。見慣れたりぼんに丸いおでこ。きれいな桃色の瞳は閉じられていて見えない。
…まつげ長。
あまり意識しないように、視線をまた正面に戻した。
またバスが大きく揺れる。今までで一番大きな揺れだ。バスの揺れと共に、襧豆子の体もまた大きく傾く。自身の肩に預けていた頭が反対に傾きそうになるのを、咄嗟に引き寄せた。襧豆子の左肩を掴んだ瞬間、被さるように襧豆子の右肩に手が伸びてくる。
重力に身を任せ、今度は反対側へ傾く。左肩を掴んでる自身の手は、なぜだか離せなかった。
なんでこれで起きないんだ。
………いや、それよりも───。
ふいに窓の外へ視線をうつした。
隣で眠っている襧豆子が窓に反射されて映る。
外を見ると、小さな男の子が二人と、女の子が一人。仲睦まじい様子で歩道を歩いている姿が見えて、それは一瞬にして流れて見えなくなった。
あれぐらいの年齢だっただろうか。
それよりもっと前だったか。
襧豆子のことを好きだと気がついたのは。それは意外にもすんなりと、自分の中で馴染んでいった。
どこが好きとか、何がきっかけでとか。そんな細かいことは上手く言えないが。
強いて言うならば───。
襧豆子が笑ってると嬉しかった。
名前を呼ばれるとくすぐったかった。
そばに居てくれるだけで優しい気持ちになれた。
本当にそんな単純なものだった。
まだ眠っている襧豆子を窓越しに見つめる。いまだに頭はゆらゆらと揺れていて、あれでよく起きないなと思う。
視線を正面に戻すと、見覚えのある交差点が見えた。バスが大きく揺れる。瞬間、左肩にやわらかい衝撃が降りかかった。襧豆子の長い黒髪が、シャツの下から伸びる自身の腕を撫でた。俺の肩に頭を預けても、尚起きないで気持ちよさそうに寝ている。
………人の気も知らないで。
そっと横目で隣を見る。見慣れたりぼんに丸いおでこ。きれいな桃色の瞳は閉じられていて見えない。
…まつげ長。
あまり意識しないように、視線をまた正面に戻した。
またバスが大きく揺れる。今までで一番大きな揺れだ。バスの揺れと共に、襧豆子の体もまた大きく傾く。自身の肩に預けていた頭が反対に傾きそうになるのを、咄嗟に引き寄せた。襧豆子の左肩を掴んだ瞬間、被さるように襧豆子の右肩に手が伸びてくる。
重力に身を任せ、今度は反対側へ傾く。左肩を掴んでる自身の手は、なぜだか離せなかった。
なんでこれで起きないんだ。
………いや、それよりも───。