あの日のヒーロー

キメツ学園中等部。

あの日から月日は流れ、俺たちは中学二年生になった。二年に上がり、襧豆子と同じクラスになれたと無一郎は喜んでいた。いくらでもチャンスはあっただろうに。頬を赤く染め、まだ必死に抵抗している弟を見ながら思った。

先月、県外で将棋の対局があって無一郎と行ってきた。その帰りに駅の中の土産物屋に立ち寄ってみると、うさぎのマスコットを見つけた無一郎が、襧豆子に似てると言って購入していた。

ピンクのりぼんを付けたうさぎは、確かに襧豆子と似ている気がした。プレゼントすると意気揚々だったくせに、いざ学校で本人を前にすると『やっぱり子どもっぽかったかも…』と手のひらを返すように意気消沈した。

いや子どもだろうが。

心の中でツッコんでおく。

普段は襧豆子と普通に話しているくせに。襧豆子を可愛いと噂している男子には、睨み殺す勢いで牽制しまくっているくせに。

ただ土産を渡すのにどれだけ時間かけてんだよ。

悶々としている中、用事で高等部から中等部へ来ていた玄弥まで巻き込み、あの騒ぎだ。

「昼休み終わっちまうぞー」
声をかけてもぎゃーぎゃー騒いでる二人には聞こえていない。そんな二人を傍観しつつ、階段から降りてくる禰豆子の姿を見つけた。

気づいていない二人はさておき、叫んだ。
13/15ページ
スキ