あの日のヒーロー

「…っ…雨!なかなか止まないな!」
恥ずかしさを隠すように空を見上げて言った。先ほどよりも幾分かは、雨が弱くなっている。

「多分もうすぐ止むんじゃないかな。こういう雨、今の時期によくあるんだって。えーと確か名前があって…」女の子が考える仕草を見せた後、すぐに声を発した。

「ごりらごうう!」
「ゴジラゴウウ!」


「………………ゲリラ豪雨のこと?」
もやもやしていた問題の答えを、無一郎が遠慮がちにつぶやく。同じことを思っていた様子の女の子も、同様に叫んだ。


「あ、それそれ!」
「ゲリラ豪雨!それだ!」
「………ゴリラとゴジラ…ふ…あははっ」
悲しそうな顔をしていた無一郎に笑顔が戻った。胸をなで下ろした後、つられるように俺まで笑い声がもれた。さらにつられるように、女の子も笑いだし始めた。

「ゴリラもゴジラも惜しかったよ」

「意味としては似てる感じしねぇ?」

「兄さん”ラ”しか合ってないよ」

「うるせ」
笑ったら少しだけ気が晴れていくのを感じる。
うるさかった雨音はいつの間にか小さくなり、ほとんど小雨になっていた。青い空が少しずつ顔を出し始める。
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