会えない時間

「水族館…」
「………遠いからだめ」

「夜景…」
「………冷えるからだめ」

「買い物…」
「………近場ならいいよ」

「ご飯…」
「………家で食べよっか」

「………お家でぎゅー」
「………それは絶対する」

顔を上げると、私を見つめる無一郎くんと目が合った。豆電球にほんのり照らされて、顔がぼんやりと見える。窓の外から電車の走る音が近づいてきて、すぐに遠ざかっていった。無一郎くんの今住んでいる場所が遠いところにあることを、改めて認識する。

もぞもぞと体を動かして、無一郎くんと同じ目線にまで行き着く。頬にふれると、甘いお菓子のように微笑んでくれた。優しく髪をなでてくれる手がくすぐったい。

やっぱり…。
きゅっと下半身が疼く。彼からは見えない布団の下で、こっそりと太ももを擦り寄せた。
5/8ページ
スキ