夏の誘惑
「なんだ…よかった」
「あははっ、襧豆子って案外あわてんぼうだね」
「だって、危なくないクラゲがいるなんて知らなくて…びっくりした」
ふと辺りを見渡した。無一郎くんに借りていたゴーグルが、浅瀬の方角へ漂っていくのが見える。
「あんなところに」
「いいよ。このまま取りに行って、一回上がろうか。休憩しよ」
浮き輪にしがみつくよう促され、そのまま彼が引っ張っていく。微力でしかならないバタ足をしながら浜辺を目指すと、足が底につく感触はすぐだった。ゴーグルを手にした無一郎くんが振り返る。
「!?ちょっ…襧豆子、前!!」
顔を真っ赤にした彼の視線は、私の胸元へ向けて。夏の空気が、体のある一部をふっと吹きかけた気がした。
「え…?きゃあっ!!」
自分の置かれている状況にやっと気づくと、露わになっている胸を両腕で隠す。さらに隠しきれてない部分の壁になるように、無一郎くんが私を咄嗟に抱きしめた。波が押し寄せ水着だけを持って去ってしまったような感覚に、こうなるまで気づけなかった。
「えっ!ど、どうしよう…水着がない、流されちゃった…!」
「だ、大丈夫!探してくる!」
「あっ!まって、いま離れられたら…!」
胸が見える。無意識のうちに、無一郎くんへ体を押しつけていた。
「え!?あ、そっか…!でもまって、この体勢はちょっと…!」そう言いつつ、私の体を包む彼の腕はゆるまなくて、身動きができない。そして今動くわけにもいかなかった。唯一の持ち物である浮き輪は透けて見えるし、中央には体をくぐらせる穴があるため、体を隠すには向かない。そうなると、無一郎くんの胸の中が一番の安全地帯となる。
「………なにやってんだ?おまえら」
恥ずかしさでパニックに陥る二人に、有一郎くんが呆れた表情で近づいてきた。
「あははっ、襧豆子って案外あわてんぼうだね」
「だって、危なくないクラゲがいるなんて知らなくて…びっくりした」
ふと辺りを見渡した。無一郎くんに借りていたゴーグルが、浅瀬の方角へ漂っていくのが見える。
「あんなところに」
「いいよ。このまま取りに行って、一回上がろうか。休憩しよ」
浮き輪にしがみつくよう促され、そのまま彼が引っ張っていく。微力でしかならないバタ足をしながら浜辺を目指すと、足が底につく感触はすぐだった。ゴーグルを手にした無一郎くんが振り返る。
「!?ちょっ…襧豆子、前!!」
顔を真っ赤にした彼の視線は、私の胸元へ向けて。夏の空気が、体のある一部をふっと吹きかけた気がした。
「え…?きゃあっ!!」
自分の置かれている状況にやっと気づくと、露わになっている胸を両腕で隠す。さらに隠しきれてない部分の壁になるように、無一郎くんが私を咄嗟に抱きしめた。波が押し寄せ水着だけを持って去ってしまったような感覚に、こうなるまで気づけなかった。
「えっ!ど、どうしよう…水着がない、流されちゃった…!」
「だ、大丈夫!探してくる!」
「あっ!まって、いま離れられたら…!」
胸が見える。無意識のうちに、無一郎くんへ体を押しつけていた。
「え!?あ、そっか…!でもまって、この体勢はちょっと…!」そう言いつつ、私の体を包む彼の腕はゆるまなくて、身動きができない。そして今動くわけにもいかなかった。唯一の持ち物である浮き輪は透けて見えるし、中央には体をくぐらせる穴があるため、体を隠すには向かない。そうなると、無一郎くんの胸の中が一番の安全地帯となる。
「………なにやってんだ?おまえら」
恥ずかしさでパニックに陥る二人に、有一郎くんが呆れた表情で近づいてきた。