欲しいもの

「大事な予定って…?」
夏休みの予定を頭の中で並べていく。部活以外に思いつくのは、大量の宿題がめんどくさいということしかなかった。襧豆子との予定が入れば、それが大事な予定になるのに。

「八月!無一郎くんと有一郎くんの誕生日があるじゃない」それがあたかも自分の誕生日であるかのように、彼女は心底嬉しそうな笑顔を見せた。不意打ちをくらった心臓が、小さく息を吹きかけられたようにこそばゆいた。

「そういえばそうだったね」

「え…忘れてたの?」
「高校生にもなったし、もうそんなにはしゃいだりはないかな」

「二人の大事な日だよ。ちゃんとお祝いしなきゃ…えっと…」最後の卵焼きを食べおわった彼女は、弁当箱を急いでしまうと辺りをきょろきょろしだした。その瞳は地面に向けられており、何かを探している。

「あった」
つられるように自分の分もしまい終えると、急に襧豆子が立ち上がった。それはベンチの後ろ。木の根元の近くに、目当ての物を見つけたらしい。
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