本命チョコ
「───花子のガトーショコラを、間違えて食べちゃった、ってこと…?」
さぁっと血の気が引くのが自分でもわかった。
だってあれは、ただのチョコじゃない。一番大好きな人にあげる本命チョコだ。
いざ真実を口にしてしまうと、糸が切れたように花子の瞳からボロボロと涙がこぼれだした。泣き叫ばれる方が、まだほんの少しマシだったかもしれない。机に突っ伏して顔を隠しながら、静かに泣きだした花子の姿に、ますますきょうだいたちは申し訳なさそうに唇を噛んだ。
駆け寄り、嗚咽を漏らす妹の肩に手を置いた。そのときにやっと気づく。
昨日焼きあげたガトーショコラが、ぽつんと机に置かれている。ピンクと白の二色でデザインされた縦縞の丸い型。完成したての綺麗な姿形はとうになくなっており、三分の一程度しか残っていない生地は、食べかけであろう端の方が小さな粒子となって崩れてしまっていた。
「ごめんな、花子…。兄ちゃんがちゃんと、説明しなかったから…」
「ごめん…花子と姉ちゃんがクッキーくれたから…その…ケーキみたいなのまで作ってたの知らなくて…」
「ごめんなさい…」
順々に謝罪をしても、花子は顔を上げなかった。小さく丸まって小刻みに震える肩が切ない。悪気があってやったわけじゃない。きちんと伝えておかなかった私たちにも、十分に落ち度はあるのだ。それを理解しているものの、ショックが大きすぎてやるせないのだろう。
さぁっと血の気が引くのが自分でもわかった。
だってあれは、ただのチョコじゃない。一番大好きな人にあげる本命チョコだ。
いざ真実を口にしてしまうと、糸が切れたように花子の瞳からボロボロと涙がこぼれだした。泣き叫ばれる方が、まだほんの少しマシだったかもしれない。机に突っ伏して顔を隠しながら、静かに泣きだした花子の姿に、ますますきょうだいたちは申し訳なさそうに唇を噛んだ。
駆け寄り、嗚咽を漏らす妹の肩に手を置いた。そのときにやっと気づく。
昨日焼きあげたガトーショコラが、ぽつんと机に置かれている。ピンクと白の二色でデザインされた縦縞の丸い型。完成したての綺麗な姿形はとうになくなっており、三分の一程度しか残っていない生地は、食べかけであろう端の方が小さな粒子となって崩れてしまっていた。
「ごめんな、花子…。兄ちゃんがちゃんと、説明しなかったから…」
「ごめん…花子と姉ちゃんがクッキーくれたから…その…ケーキみたいなのまで作ってたの知らなくて…」
「ごめんなさい…」
順々に謝罪をしても、花子は顔を上げなかった。小さく丸まって小刻みに震える肩が切ない。悪気があってやったわけじゃない。きちんと伝えておかなかった私たちにも、十分に落ち度はあるのだ。それを理解しているものの、ショックが大きすぎてやるせないのだろう。