本命チョコ

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自宅までの帰り道を急ぎ足で歩く。
朝のやり取りの後。里芋組に来ていた有一郎くんから、部活があるだろうと思いきりツッコまれていた無一郎くんは、まだ部活に励んでいる時間だ。今の間にチョコレートを取りに戻って学校へ向かえば、無一郎くんの部活がおわる時間とうまく重なるだろう。

『本命を優先してほしい』
そう言って、優しく背中を押してくれた友人たちがいるのだ。だからもう後戻りはできない。有一郎くんに真菰ちゃん、錆兎くん…そして花子にまでバレていた私の気持ちを、みんなは一体いつから気づいていたんだろう。

友人たちに渡すクッキーのラッピングは、名前入りのカードと共にもう済んでいるから、明日にでも持っていく予定だ。冷蔵庫で待ってるガトーショコラの最終工程を、一度頭の中で確認しておかなくては。
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