会えない時間

「そういう可愛いことは、今度するときに言ってよ。朝になってもやめないから。今日の分もまとめて、一日中しよっか」

これぐらいの楽しみはもらわないと、今日我慢できた僕へのご褒美には割に合わない。真っ赤な顔をした襧豆子の反応を伺う。

「………する」
小さな声で確かにそうつぶやいた。

甘い約束を胸に、昂る高揚感を隠して。
再び愛しい彼女へキスを落としていく。

今この腕の中に襧豆子がいる。それなのに、すでに今度が待ち遠しいだなんて。何とも不思議で、複雑な気持ちだ。会えない時間は、日に日に襧豆子への恋心を育てていた。

この想いは、距離なんかに邪魔されることはない。

「無一郎くん…好き…」
首に腕を回してくる彼女の体を抱きしめた。
ふわりと香るのは、自分と同じシャンプーの匂い。彼女の纏う部屋着は、初めて襧豆子が泊まりにきた日からこの部屋にある。当たり前のようにしまわれて、持ち主が訪れた日にだけ、袖を通される。自身の匂いが染みついたそれに、安心と興奮を覚えた。




願わくば、明日も明後日も次の日も、彼女と共に。
どこへ行くも何をするも、彼女と共に。


理性は未来で飛ばすことにして、今はただ───。

「大好きだよ」

目の前の彼女へ、溢れんばかりの愛を贈る。
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