居場所

翌日は日が昇る前に目が覚めた。
残っていた仕事を淡々とこなし、予定よりもはやく終えることができた。自宅に着くのは夜の予定だったが、夕方頃には着きそうだ。初日と全然顔つきが違うと宇髄さんに笑われたが、そんなからかいの言葉も素直に聞き流せた。

宇髄さんと別れた後は、自然と足が全力疾走になっていた。家までの距離が短くなるにつれ、高揚感が増していく。門前をくぐり家の扉を開けると、すぐに夕餉の匂いが出迎えてくれた。彼女の名を呼びながら中へ入っていくと、居間にその姿はない。


次に寝室の扉を開けると、ちょうど鏡の前で振り返った襧豆子と目が合った。

袖の長い黒い服を着ているが、両手が見えないほどにだぼだぼだった。何度も袖を通して鬼と対峙してきた、鬼殺隊時代の僕の隊服。数秒の間の後、襧豆子の叫び声が部屋中に響きだす。


………帰ってきた。
この声を聞いて初めてそう実感できる。




叫び声だけど。
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