君よ進め
木の幹を背もたれに不死川さんが腰かけたので、ならって隣に座った。先ほどもらったおはぎを口に入れると、甘い餡子が口の中いっぱいに広がる。
襧豆子にも、食べさせてあげたかったな。
美味しい物を食べるとき、本当に美味しそうな顔をして食べる、いつぞやの想い人が脳裏によぎった。
「痣のこと、気にしてるか?」
「………正直、気にしてます。自分でも不思議ですが、鬼狩りをしていた頃は、死ぬことなんて怖くなかった。自分の命で鬼を滅することができるなら、悔いなんてないって。でも今は………もっと生きたいと感じています」
「ハッ。それが普通の感情だろうよォ。今までが普通じゃなかったってだけだ。確かにあまね様はあぁ仰っていたが、万が一ってこともあるかもしれねぇだろォ。もしかしたら二十五歳以上生きるかもしれねェし。そっちを信じてみたっていいんじゃねぇかと俺ァ思うが」
うっすらと期待をこめていた推測を、不死川さんも考えていたようだ。前例のひとつでもいい。二十五なんて数字関係なく、それ以上に生き抜いた痣者の人がいたらいいのに。残念ながら、あまね様からも他の誰からも、そんな都合のいい話は聞けなかった。
「不死川さんは…死ぬのは怖いですか?」
「………そりゃちっとはな。けど、自分が死ぬより怖ぇもんを、今まで見すぎてきたからなぁ…今さら自分が死ぬことなんざ、なんとも思わねぇよ。もう悔いもねぇしなァ」
「………不死川さんが死んだら、悲しむ人はたくさんいます。僕もみんなも…玄弥だって」
「………そうか」
この話はこれでおわり。そう切りあげようと示したのか、泣きたいのをごまかしたのか、死川さんが懐からまたおはぎを取り出した。
自分の分かと思いきや、また僕の手元へと差し出してくる。断るのも失礼かと思いながら、お礼を言って受け取った。
襧豆子にも、食べさせてあげたかったな。
美味しい物を食べるとき、本当に美味しそうな顔をして食べる、いつぞやの想い人が脳裏によぎった。
「痣のこと、気にしてるか?」
「………正直、気にしてます。自分でも不思議ですが、鬼狩りをしていた頃は、死ぬことなんて怖くなかった。自分の命で鬼を滅することができるなら、悔いなんてないって。でも今は………もっと生きたいと感じています」
「ハッ。それが普通の感情だろうよォ。今までが普通じゃなかったってだけだ。確かにあまね様はあぁ仰っていたが、万が一ってこともあるかもしれねぇだろォ。もしかしたら二十五歳以上生きるかもしれねェし。そっちを信じてみたっていいんじゃねぇかと俺ァ思うが」
うっすらと期待をこめていた推測を、不死川さんも考えていたようだ。前例のひとつでもいい。二十五なんて数字関係なく、それ以上に生き抜いた痣者の人がいたらいいのに。残念ながら、あまね様からも他の誰からも、そんな都合のいい話は聞けなかった。
「不死川さんは…死ぬのは怖いですか?」
「………そりゃちっとはな。けど、自分が死ぬより怖ぇもんを、今まで見すぎてきたからなぁ…今さら自分が死ぬことなんざ、なんとも思わねぇよ。もう悔いもねぇしなァ」
「………不死川さんが死んだら、悲しむ人はたくさんいます。僕もみんなも…玄弥だって」
「………そうか」
この話はこれでおわり。そう切りあげようと示したのか、泣きたいのをごまかしたのか、死川さんが懐からまたおはぎを取り出した。
自分の分かと思いきや、また僕の手元へと差し出してくる。断るのも失礼かと思いながら、お礼を言って受け取った。