想いの行く末
『前よりは飛ぶようになったけど…やっぱり無一郎くんの紙ひこうきには、かなわないね』
苦笑いしながら彼女は言った。
空に向かって飛んでいく、ふたりの紙ひこうき。
襧豆子の紙ひこうきが先に落ちて、僕の紙ひこうきは、ぐんぐんと風をきって飛んでいった。
襧豆子を置いていってしまう。
あの紙ひこうきのように。
あまりにも早すぎる別れに、涙を流していた佳代さんは、未来の襧豆子そのものを表していた。
なんて事をしようとしたのか。短命な身のくせに、結婚の申し込みをしようだなんて。残される方の気持ちを考えもしないで。自分の身勝手さに心底嫌悪感を覚えて、吐き気がした。
日だまりのような彼女の隣は心地よくて、いつも自分を温かい気持ちにさせた。温かすぎて、どんなことでも受け入れてくれる。そんな錯覚を覚えてしまうほどに。
───………あぁ。だからか。
勘違いをしていたんだ。
襧豆子ならきっと受け入れてくれると。
襧豆子の優しさに甘えようとしていたんだ。
呑気に指輪なんか見に行って、危うく大切な女の子を不幸にさせるところだった。そんな自分を恥じ、そして踏みとどまれたことに安堵していた。
目を強く瞑ると、止まることを知らぬ涙が流れ落ちてきた。網膜に焼きつけた彼女の姿が映る。重たい体を起こして、家の中を見回した。
自分以外の声はなく、物音もしない、ガランとした家。面影だけを残し、楽しそうに折り紙を折っていた襧豆子は、もういないのだった──。
苦笑いしながら彼女は言った。
空に向かって飛んでいく、ふたりの紙ひこうき。
襧豆子の紙ひこうきが先に落ちて、僕の紙ひこうきは、ぐんぐんと風をきって飛んでいった。
襧豆子を置いていってしまう。
あの紙ひこうきのように。
あまりにも早すぎる別れに、涙を流していた佳代さんは、未来の襧豆子そのものを表していた。
なんて事をしようとしたのか。短命な身のくせに、結婚の申し込みをしようだなんて。残される方の気持ちを考えもしないで。自分の身勝手さに心底嫌悪感を覚えて、吐き気がした。
日だまりのような彼女の隣は心地よくて、いつも自分を温かい気持ちにさせた。温かすぎて、どんなことでも受け入れてくれる。そんな錯覚を覚えてしまうほどに。
───………あぁ。だからか。
勘違いをしていたんだ。
襧豆子ならきっと受け入れてくれると。
襧豆子の優しさに甘えようとしていたんだ。
呑気に指輪なんか見に行って、危うく大切な女の子を不幸にさせるところだった。そんな自分を恥じ、そして踏みとどまれたことに安堵していた。
目を強く瞑ると、止まることを知らぬ涙が流れ落ちてきた。網膜に焼きつけた彼女の姿が映る。重たい体を起こして、家の中を見回した。
自分以外の声はなく、物音もしない、ガランとした家。面影だけを残し、楽しそうに折り紙を折っていた襧豆子は、もういないのだった──。