想いの行く末

土手の上から、太陽がゆっくりと沈んでいくのが見えた。夕日に照らされて、自分たちの影の色が濃くなってくる。

先に帰るから、ゆっくり話しているといい。そう言う佳代さんの背中を見送っていると、ふいに襧豆子がつぶやいた。

「…奇跡だよね」

「奇跡?」

「人の死っていつ訪れるかわからないから。生きていること自体が奇跡だなぁって思って。その中で、おじいちゃんおばあちゃんになっても一緒にいられるのって、本当にすごい事だよね」

「…そうだね」
想像以上に、人の命はあっけなく消え失せる。理不尽に奪われる命の重みを、僕たちは身をもって知っている。


人の死はいつ訪れるかわからない。本当にその通りなのに、妙に引っかかるものがあった。それを感じた瞬間、古傷が疼くような鈍い痛みが全身を駆け巡る。

まるで首を絞められているような息苦しさがせり寄せて、自分の中で疑問符が浮かんだ。


死がいつ訪れるか、そんなものは誰にもわからないし、知る術もない。

でも、すでに自分の死期を知っているのなら?






───ボクノ寿命ハ、アト何年?

頭の血管が急速に波打ち出して、頭痛を引き起こした。
ドクドクと荒ぶりだす胸の鼓動。共に思い出すのは、あのときあまね様の仰っていた言葉。


『痣が発現した方はどなたも例外なく───』


二十五歳を待たずに死ぬ。

鬼との激闘で、自分は痣を発現させている。
寿命の前借りと言われている痣の力。十五になった僕の残りの寿命は…運がよくて十年。

でなければ、二十五の歳を迎える前に、この世を去っているかもしれないのだ───。
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