想いの行く末

───店員に断りをいれ店を出ると、この場にいない宇髄さんに八つ当たりの念を送った。行きと比べて足どりは重い。せっかくよい指輪に出会えたのに、今日それを買うことはできなかった。

なんで教えてくれなかったんだ。
失念していた自分にも腹が立つ。

店員から指輪のサイズを聞かれたとき、ハッとした。どんな指輪がいいのか、いつ襧豆子に伝えようか考えるのに夢中で、指のサイズのことなど頭から抜け落ちていた。彼女の指にぴったりと合うものでないと意味がない。

広げた手のひらを空へかざし、適当に指を折り曲げてみる。強く握ると壊れてしまいそうな、僕よりも小さな手だった。ぬくもりは思い出せても、指のサイズまではむずかしかった。

今日のところは下見だけで済まし、今一度出直すしかない。そう切りかえて帰路に着くため歩を進める。

ぼんやりと前を見ながら歩いていた。大通りでたくさんの人間とすれ違う中、見知った後ろ姿が目に入る。

腰まである長い髪に、橙色の毛先。
麻の葉模様の着物と、市松模様の帯。

───間違えるわけない。

気づいたら人の波をかいくぐって走りだしていた。ぐんぐんと距離を詰めるほど、そうだと確信する。

「………襧豆子!」
大声で名を呼ぶと、ゆっくりと彼女が振り返る。桃色の瞳と丸いおでこが印象的な、大切な女の子がそこにいた。
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