想いの行く末

竹刀を構えて、技の体勢にはいる。
肺へ酸素を送り込み、少しばかり血の巡りを良くさせた。宇髄さんの話し声がピタリとやんだと同時に、足を踏み込む。

「──霞の呼吸、肆ノ型。移流斬り」

肩慣らし程度の力に抑え、久方ぶりの技を繰り出した。空気を斬り裂く音が道場内に響いて、風が生まれる。建物を囲む壁が突風を抑え、半分だけ開いていた木製の扉がガタガタと揺れていた。

刀を鞘に収めるときの癖で、最後に一度竹刀を振り払う。


「……宇髄さん」

「うん?」
「その…えっと…」
気恥ずかしくて宇髄さんの方を向けなかった。声に出そうとするも、なかなかに言い淀んでしまって話が進まない。

そんな僕に怒るわけでもなく、宇髄さんはゆっくりと促してくれた。


「なんだ?ゆっくり話せよ」

「……あの…ずっと一緒にいたいって相手に伝えるのは………つまり、そういうことになりますよね…?」

もう鍛錬を終えたというのに、竹刀を握る力が弱まらない。鬼をこの世から滅すること。それだけを願って、これまで仲間と共に闘ってきた。

そんな自分に、それ以外の願いができた。

叶える術を模索しても、いまいち自信がもてなくて、これが最善なことなのか判断できずにいる。宇髄さんが、口角を上げて言った。

「そういうことになるな!」


──『無一郎くん』
そのとき、耳に残る彼女の声を聞いた。


「………その、結婚の申し込みするときって…何を贈ればいいんでしょうか…?」

必死で恥ずかしいのを押し殺してたずねた。きっと真っ赤になっている。こんな顔になっているのは、久しぶりに呼吸を使ったからだ。からかわれたら、そう答えようと思った。

宇髄さんから、歓喜の大声が上がった。
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