想いの行く末

「あーーー!なっさけねぇなぁ!ほんっっっっっとになっさけねぇなぁーーー!」

どこかの蛇柱を連想させるような、宇髄さんの皮肉の嵐が、先ほどからとまらない。

鬼殺隊が正式に解散されて、皆は各々の生活に戻っていった。それでも毎日やっていた習慣は簡単に体から抜けきれず、今日も朝から素振りをしていた。あの頃とちがい、今はこの広い道場には僕ひとりだ。

昼時が近づいてきた頃合に、宇髄さんが訪ねてきた。

そしたらこの有様だ。
道場の隅に座ってずっと喋っている。
相手にしていなくても喋っている。

「行くなって一言でも言ったらよかったじゃねぇか。それなのに黙って見送りやがってそれがカッコイイと思ってんのかねー。襧豆子がいなくなってまた表情筋が活動とめてるし、あれだけ積極的だったくせに急にどうしたんだよ。どうせまたグダグダグダグダ考えてんだろ。わけーんだから突っ走りゃいいんだよ。そんなんじゃ他の男に取られるぞ。善逸や伊之助だって一緒に住んでるんだし」

宇髄さんの言うことは尤もすぎて、ぐうの音も出なかった。一番気にしている痛い部分を、容赦なく突いてくる。

善逸と伊之助も竈門家で一緒に住むのだと聞いたときは、鈍器で頭を殴られたようだった。兄の炭治郎もいるといえど、襧豆子が他の男とひとつ屋根の下だなんて、想像するだけで気分が悪くなった。

かといって、僕に引きとめる権利なんてものはない。せっかく故郷へ帰れるというのに、水を差すような自分の本音なんか言えるわけない。

葛藤を抱えたままに、襧豆子たちは故郷へと帰ってしまった。こうして竹刀を握り、いくら空気を斬ったところで、心にぽっかりと開いた穴が埋まることはないのだ。
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