蛍火の下で
「襧豆子」
無一郎くんと手を繋いだままだったことに、名を呼ばれてやっと気づく。
「無一郎くん、さっきの…」
言いかけてハッとする。彼の青みがかった緑色の瞳が、わずかに揺れていた。夜闇に慣れた目と、心もとない蛍の光で一瞬見えただけだから、勘違いかもしれない。
「どうしたの?」
「…なんでもない。すごいね、蛍」
「うん。そういえば、寒くない?」
「大丈夫」
私の返事に頷いた彼は、また蛍たちへと視線を戻した。
あの蛍を…無一郎くんは誰と重ねたのだろう。
儚い光の中。彼の孤独を見た気がして、ふれていいものか躊躇った。そもそも自分にそんな資格なんてないのだ。
涙の理由は、聞かずともわかる気がする。
無一郎くんは、まるで蛍みたい。
肩にかけられたエ霞文の羽織をそっと掴む。
だからこんなに、切ないのかな。
急に怖くなって、たまらず無一郎くんの手を握りしめた。すぐに握り返してくれる手に、また泣きそうになる。
もっと、あなたの心にふれたい──。
そう願ってしまう自分の気持ちを、もう誤魔化すことはできなかった。
無一郎くんと手を繋いだままだったことに、名を呼ばれてやっと気づく。
「無一郎くん、さっきの…」
言いかけてハッとする。彼の青みがかった緑色の瞳が、わずかに揺れていた。夜闇に慣れた目と、心もとない蛍の光で一瞬見えただけだから、勘違いかもしれない。
「どうしたの?」
「…なんでもない。すごいね、蛍」
「うん。そういえば、寒くない?」
「大丈夫」
私の返事に頷いた彼は、また蛍たちへと視線を戻した。
あの蛍を…無一郎くんは誰と重ねたのだろう。
儚い光の中。彼の孤独を見た気がして、ふれていいものか躊躇った。そもそも自分にそんな資格なんてないのだ。
涙の理由は、聞かずともわかる気がする。
無一郎くんは、まるで蛍みたい。
肩にかけられたエ霞文の羽織をそっと掴む。
だからこんなに、切ないのかな。
急に怖くなって、たまらず無一郎くんの手を握りしめた。すぐに握り返してくれる手に、また泣きそうになる。
もっと、あなたの心にふれたい──。
そう願ってしまう自分の気持ちを、もう誤魔化すことはできなかった。