蛍火の下で

「そろそろ、順番にお風呂に入る?」

「そうだね。夕食の前に入っちゃおう」
里にある温泉は、基本的に混浴となっていた。
誰と入ろうが、それがたとえ異性だろうが何とも思わないけど、襧豆子と二人で入るのはいろいろとまずい。男としてでも、炭治郎から襧豆子を預かった身としても、だ。

一人で入らせるのも心配だし、ましてや僕以外の男と、混浴で入らせるわけにもいかない。小鉄くんか鉄穴森さんに、人のいない時間帯を教えてもらおうか。

「無一郎くん、お先にどうぞ」

「いや、襧豆子が先に…ちょっと待ってて。小鉄くんたちに聞いてくる」
立ち上がったと同時に、廊下を走る足音が近づいてくる。勢いよく音を立てて、部屋の障子が開かれた。

「あ〜〜〜!!!本当にいた!!!」

「須磨さん!?」
「…なんでここに?」
宇髄さんの奥さんの一人、須磨さんが障子の先に立っていた。驚く僕たちをよそに、馴染み深い人物たちが次々と顔をだしてきた。

「ちょっと須磨!いきなり開けるな!情事の最中だったらどうすんの!」

「こんばんは。襧豆子ちゃん、霞柱様」

「なんだなんだ!おまえらも来てたのか!」

「………奇遇だな」

順にまきをさん、雛鶴さん、宇髄さん。そして意外にも、冨岡さんまで来ている。

気になる言葉があったので、ふと襧豆子を見ると、やはり顔を赤くしていた。その言葉に関して、僕は聞こえなかったふりをした。
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