蛍火の下で

刀鍛冶の門をくぐると、相変わらず立派な建物が何軒もそびえ立っている。襧豆子が目を輝かせながら辺りを見回した。

ひょっとこの面をつけた人々が多く行き交う中、目当ての人物を探していると、すぐに声が届いた。通りの奥から、小鉄くんが駆け寄ってくる。

「時透さん!襧豆子さん!」

「小鉄くん!」

「お久しぶりですね!」
「元気そうでよかった」
刀鍛冶の里が襲来されたあの日に、僕の命を救ってくれた小鉄くん。今ではいい友人となり、僕が昏睡状態のときも療養中も、幾度となく見舞いに来てくれた。襧豆子や炭治郎とも仲がよく、談笑したり一緒に遊ぶことも多くあった。

まずは、里長である鉄珍様に挨拶をしに向かった。若い娘、つまり襧豆子を前にした鉄珍様が、面をつけていてもわかるほど上機嫌になっていた。

その後に今日泊まる部屋に案内されたのだが、一部屋しか用意されておらず、慌ててもう一部屋を頼んだ。

………一緒の部屋は、さすがにまずいだろ。

伝達に不一致が生じただけか、誰かの差し金なのかはわからない。
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