お出かけ日和

お茶を飲んでいた襧豆子が、ふと話を切りだした。

「無一郎くん。聞いてもいい?」

「なに?」

「…あのさ。柱の人って、どういう人たちだったの?その、煉獄さんや、しのぶさんとか…甘露寺さんとか」

「……あぁ。鬼の頃の記憶、少しあるんだったよね」

「うん。どんな人たちだったのかなぁって…皆さんとも、ちゃんとお話してみたかったの。本当に優しい人たちばかりだったから」

「…うん。そうだね」

鬼舞辻無惨との激闘で、たくさんの隊士たちが命を落とした。後にも先にも、過ぎてしまった時間は戻せない。わかっていながらも、あの時きちんと感謝の言葉を伝えていたならと、後悔の念が残る。

古傷となっている心残りが、胸の中でチクチクと痛みだした。少し考えてから、襧豆子の質問に答える。

「えっと…煉獄さんはね、そうだな…梟みたいな人だったかな」

「え…?………ふ、梟!?」

「そう。梟。記憶をなくしてた時の印象だけど。あ、もちろん優しい人だったよ。快活な声の人だった」

「そうなんだ…じゃあしのぶさんは?」

「…燕みたいな人だったかな」

「燕!」
興味深そうに襧豆子は頷いているけど、全然質問の答えになってないな、と自分でも思った。
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