自覚 〜襧豆子の場合〜
いつもの日常に変化があったのは、思いのほかすぐだった。
名前を呼ばれた瞬間、わかりやすく顔に出ていたかもしれない。私が犬なら間違いなく尻尾を振っていただろう。
だって本当に嬉しかったから。
無一郎くんから声をかけてくれるなんて、思っていなかったから。
手を引かれたのは少しだけ恥ずかしかったけど、彼とゆっくり話をしたかったのは自分も望んでいたことだった。
ふろふき大根を作ったことに、わざわざお礼を伝えにきてくれた。食べてくれただけでも嬉しいのに、紙ひこうきの作り方を、また教えてくれると約束してくれた。
私はすごく浮かれていたんだと思う。
すごく、すごく浮かれて、調子に乗っていたんだと思う。
───手から伝わってくる、無一郎くんのぬくもり。
どうして今、彼にふれているのか。
手を握られているのか。
理解できず、時が止まったように感じていた。
じっと自分を見つめる、青みがかった緑色の瞳。弟と重ねてしまったことに対して、怒っているのだと思った。
でも、徐々に怒っているわけではないと察する。
むしろこれは、
───捕らわれる感覚。
名前を呼ばれた瞬間、わかりやすく顔に出ていたかもしれない。私が犬なら間違いなく尻尾を振っていただろう。
だって本当に嬉しかったから。
無一郎くんから声をかけてくれるなんて、思っていなかったから。
手を引かれたのは少しだけ恥ずかしかったけど、彼とゆっくり話をしたかったのは自分も望んでいたことだった。
ふろふき大根を作ったことに、わざわざお礼を伝えにきてくれた。食べてくれただけでも嬉しいのに、紙ひこうきの作り方を、また教えてくれると約束してくれた。
私はすごく浮かれていたんだと思う。
すごく、すごく浮かれて、調子に乗っていたんだと思う。
───手から伝わってくる、無一郎くんのぬくもり。
どうして今、彼にふれているのか。
手を握られているのか。
理解できず、時が止まったように感じていた。
じっと自分を見つめる、青みがかった緑色の瞳。弟と重ねてしまったことに対して、怒っているのだと思った。
でも、徐々に怒っているわけではないと察する。
むしろこれは、
───捕らわれる感覚。