自覚 〜襧豆子の場合〜

───産屋敷輝利哉様が主催した、鬼殺隊の大宴会。隊士たちへの感謝と労い、戦死した隊士たちへの弔いをこめたものだと聞く。

輝利哉様の挨拶もほどほどに、大広間に集った鬼殺隊の面々。宴会が始まると、用意してくださった大量のお料理があっという間になくなっていき、空の器の方がその数を上回りそうだった。

なにせ隊士は男性が多い。見かねた宇髄さんの奥様たちが先陣を切り、それに私やアオイちゃんたちも続いた。

おにぎりを握ったり、煮物を作ったり、魚を焼いたり、女性陣で和気あいあいと準備するのは、とても楽しかった。母と妹の花子と一緒に家事をすることはあったが、こんなに大勢で台所に立つなんて初めてだ。

蝶屋敷の女の子たちは、毎日大勢の隊士たちの食事を作っているので、さすが手際がいい。

雛鶴さん、まきをさん、須磨さんの三人はとにかく連携がすごくて、調理に盛り付け、片付けを同時進行している。

「これぐらい楽勝です!」
須磨さんが自信満々に、右手と左手に一つずつ食事を運ぼうとする。その後盛大に転んで、料理が台無しになる光景にも見慣れた。

「須磨ぁぁあ!!」
「………はぁ」
まきをさんの怒号も、雛鶴さんのため息も、みんなの苦笑いも、私としては全部が楽しく思えた。

おにぎりを握るカナヲちゃんへ、兄の好きなおにぎりの具をこっそりと耳打ちした。顔を赤くして、いそいそと梅こんぶ入りのおにぎりを握り始める姿が可愛くて、こそばゆくなる。

………無一郎くんの好きな具は、なんだろう。

おにぎりを握りながら、彼の後ろ姿を思い浮かべた。
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